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YAMAHA PACIFICA PAC611VFMをギター好きの観点からレビュー

長年、コストパフォーマンスの良いギターとして知られてきたYAMAHA「PACIFICA PAC611VFM」を購入しました。ぼっちざろっくの後藤ひとりがアニメ最終話で購入したことで「ぼっちギター」とも呼ばれて大人気となりました。しばらく入手難でしたが在庫も見られるようになり、そのポテンシャルの高さを確かめるべく購入しました。ハイコストパフォーマンスと言われている実力はどれほどか? ギターのメンテナンスの経験値もたまってきたので、そのような視点からもレビューします。

YAMAHA PACIFICA PAC611VFM レビュー

YAMAHA PACIFICA PAC611VFMを買ったきっかけ

 低価格帯で定評のあるPACIFICAの実力値を確認するために、なんとかかんとか。フロントP90を搭載しているギターが欲しくて、かくかくしかじか。使いやすいリアハム仕様であり、定評のあるSeymour Duncan CUSTOM5を搭載して、ほにゃらら。

 とか、言いつつ、ぼっちざろっくの「ぼっちギター」とも呼ばれる後藤ひとり仕様のギターが欲しかったんですよ!

YAMAHA PACIFICA PAC611VFMを購入した感想とおすすめポイント

 購入した最大の理由は、書いた通りに「後藤ひとり仕様」が欲しかったからなのですが、文頭にごちゃごちゃ書いた理由もありました。手に取ってみて感じたことや、弾いてみた感想を述べてゆきます。

良いと感じた点
ネックグリップが中庸な感じで良い

 スケールはミディアムスケール、すなわちギブソンのレスポールなどと同じです。フェンダーのストラトやテレキャスターはロングスケールで、パシフィカよりも長いため、フレット間の距離が少しだけ長いです。このため、ローポジションでコード弾きをする場合には指が届きやすく、特に初心者はフェンダー系のストラトよりも弾きやすいと感じるのではないか?と思います。

 そしてネックグリップ。ネックは想像していたよりも太めでしっかりしています。具体的には、フェンダーのAmerican Vintage 62(あるいはアメヴィン2 61)ストラトキャスターよりも太めで厚く、丸みがあります。Gibson Custom Shop 1959 Les Paul(いわゆる59グリップ)よりも一回り薄いというか細い感じ。アメヴィン62(アメヴィン2 62)って結構薄いネックですし、59グリップは太いよねというのが一般的な相場感かと思いますので、中庸で良いと考えたわけです。PRS SEのWide ThinやIbanezの特別に薄いネックよりも厚みがあって「普通っぽい」ので、このネックに慣れて、薄いネックにも太めのネックに移行するのも、大きな違和感が生じないと思います。

 この他、カッタウェイが深く、手が入りやすい点も弾きやすさに繋がっています。

ネックがしっかりとしているっぽい

 古典的な楽器の観点では、ネックがしっかりとしている方が全体の鳴りが良くなって良い物とされています。エレキギターの場合はピックアップでどんな音を拾うか?なので、鳴りは関係ないという観点もありますので、あくまで「古典的には」ということです。個人的に、鳴りが良い物の方が良い結果につながると考えているので、太めでしっかりとしたネックは好みです。

 その太さが関係しているのか、個体の特性(いわゆる個体差)なのかは不明ですが、トラスロッドを効かせていなくてもネックがまっすぐです。トラスロッドが効いていない状態で10-46の弦を張っても、11-49を張ってもネックが反ってきませんでした。現在はトラスロッドが「当たっているだけ」の状態にセットしており、弦の響きがネックや指板に伝達されているのを感じ、個人的に良いと考えています。

デッドポイントも無く、よく鳴っている

 指板上でどこを弾いても特に問題を感じず、デッドポイントも感じられません。ヴィンテージ系の「ボディーが鳴ってジュワッとした成分が出る」みたいな感触は乏しく、弦鳴りっぽいものの、シャラシャラキンキンする感じもありません。

Wilkinson VS-50のブリッジが音に影響を与えている

 これは「良い点」とするのか微妙なところですが、Wilkinson VS-50のブリッジはパシフィカの音の決め手のひとつのようです。Wilkinson VS-50は低価格帯用に特別に生産されている廉価版ブリッジで、単品購入できないものです。よってWilkinsonのポテンシャルが発揮されているか?と問われると微妙なところではあります。

 VS-50の話に戻すと、VS-50はシャランとしたサウンド傾向であり、フェンダー式の古典的なブリッジよりも軽やかなサウンドとなります。これがすっきりとしてエフェクターなどの乗りが良いパシフィカのサウンドの決め手となっています。

 ギター全体の重量は3.8kg程度と、コンパクトな割に「ちょい重め」となっています。ボディーが結構重い印象。重めのボディーにより硬くハッキリとしたサウンドになっており、これもパシフィカらしさに繋がっていると感じました。6弦側にもホーン(突起)があり、レスポールみたいにボディーとネックが繋がっていないので、低い低音は弱く、すっきりしています。

Seymour Duncanのピックアップはさすがに優秀

 ネック側にはSeymour Duncan SP90-1n、ブリッジ側には同じくCUSOM5 TB-14(SH-14の53mmモデル)のカバード仕様が搭載されています。いずれも超定番で人気も評価も高いピックアップです。

 SP90-1は「ギブソンのP90を再現した」という謳い文句ですが、P90の中でも比較的太くて甘くパワフルなサウンド傾向のモデルのようです。ピックアップ高さは調整できないマウント仕様(ピックアップ底にゴム部材が貼ってあってボディベタ着け)になっており、割と低めのセッティングであるため、パワーは控えめで、マイルドなセッティングになっています。ハイゲインに歪ませるとモコモコしますが、ローゲインやクリーンで弾くとまろやかで使いやすいです。

 CUSTOM5は、PAF再現ハムバッカーをパワーアップして、よりシャキッと力強いサウンドにカスタムしたピックアップとされています。公式ではミッド控えめでローが出ており、高音がシャキッと出るというバランスとされています。PAC611VFMでは、ボディーに薄いエスカッションが直付けされており、ボディにダイレクトマウントされているのに近い取り付け方法となっています。

 先に書いた通り、ギター全体としてはシャキッとした鳴りであり、これが(ほぼ)ダイレクトマウントされているせいか、低音が引き締まっていて(6弦側もカッタウェイがあるのも効いている)、低音の量感はあれどスッキリとしています。ダンカン公式の説明よりも低音は控えめな印象。ミッドはそれなり、ギター本体の鳴りによるものか高音の軽やかさや鋭さもあります。これが音作りのしやすさに繋がっています。

 スッキリとしていてクランチも合うのと同時に、CUSTOM5はハイパワー系に分類されていて、それなりのゲインのあるペダルと組み合わせるとしっかりと歪んでくれます。ドロップDのようなダウンチューニングでは、すっきりと整理されてもたつきの無い低音が出てくれます。使いやすい。特に、Roseliaのようなモダンなアニソンメタルなんかにはピッタリです。

 トーンノブを引っ張るとコイルタップ可能です。悪くないですが、特段に良いわけでもなく。オマケ程度に考えましょう。

ロックペグはやっぱり楽

 PAC611VFMにはグローバー製のロックペグが標準装備されています。ロックペグは人気ではありますが、個人的には良い点も悪い点もあると思っています。そういう個人的な感想は横に置いておいて、弦交換が楽で、巻き方によるチューニングの不安定さも無くなるため、メリットと感じる人も多いのではないか?と思います。グローバー製ですので、品質も問題ありません。

良くないと感じた点

 パシフィカの中ではミドルクラスに分類されて実売約8万円です。値上がりが激しいギター界隈の中ではこれでも低価格帯に分類されます。名のあるピックアップを搭載していることを差し引いて、10万越えでもおかしくない完成度だと思っています。

 一方、超絶に作りが良いというわけでもないです。値段なりなところもあります。

組み込み精度はそれなり

 オクターブチューニングや、フローティング前提のブリッジの調整は「それなり」でした。ただ、ここは販売店が少し手を加えるべき点だとも感じます。

 また、ネックの取り付けが少しずれていて、6弦のハイポジ部で余裕の無い(フレット端に寄っている)状態でした。これは、ネックジョイントを緩めてずらしながら締めこむことで解決しましたが、初心者に対応させるのは難しいでしょう。

フレットの仕上げはいまいち

 最初に弾いてみて、フレットがザラザラなのを感じました。いやぁこれはちょっと…。近年の初心者向けモデルではフレットの仕上げも良くなっているので、実売8万円のギターとしては若干悪い方だと思いました。フレット端の処理も悪くないけど良くもないといったところ。修正は不要なレベル。

 フレットのザラザラ感は弾き心地に直結しますので、購入後にすぐに磨き上げました。使用したのはラッピングフィルムです。

 これならば削りすぎることもなく、力を入れずにフレットを撫でて、ピカっとしてきたらフレット用に販売されている研磨剤で仕上げるということが比較的短時間で可能です。

 そこまでできない!という人は、リペアショップなどに持ち込んでメンテしてもらいましょう。本当に弾き心地が変わりますので。

ピカピカに磨いたフレット
SP90-1はローゲイン向け

 SP90-1がどうこうというわけではなく、P90系全般に言えることですが、コイルが大きくて巻き数も多いのでノイズが多めです。こればっかりは仕方が無いです。ネックポジションということもあり、歪ませすぎるとブーミーになります。これもパシフィカやSP90-1が悪いというわけではないですね。

低音スッキリのためドロップチューニングで音の壁のようなサウンドには不向き

 全体的にスッキリしたサウンド傾向であり、それゆえに低音のもたつきが無い一方で、ドロップチューニングをして音の壁を作るような重いサウンドは不得意です。そもそも、パシフィカのようなディンキー系の特徴でもあるので「良くない」というのは違うとは思っています。基本的にはすっきり系の音作りをしましょうということですね。パワー感はあるけど超ハイパワーでもないという点も留意しておきましょう。

総合的な感想

 「良くない」とすることも書きましたが、人件費が上がっている昨今で10万円以下と考えると、かなり頑張っていると感じました。ヤマハのような大企業だからできるコストダウンもあれば、大企業だから利益をしっかり取らないと厳しい(製造部門以外にも管理とか物流とか諸々に人がたくさん居る)こともあり、やっぱりパシフィカは上手くコストを落として良い楽器を作っていると感じました。

 フレットの仕上げを除けば、演奏性に文句なしです。調整全般に甘さを感じる部分もありますので、プロにしっかりと手を入れてもらうことで、かなり長く付き合えるギターであると感じています。

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