Suhr V63+(旧ML)は完成度が高い汎用性の高いピックアップ

SAITO GUITARS S-622CSのネックとミドルPUにSuhr V63+(旧ML)を載せました。Suhr MLといえば、マイケル・ランドウシグネチャーPUとしてだけでなく、幅広く使われてきたPUで、近年に名称が変わってV63+となっています。ギター本体の味の薄いSAITO GUITARS S-622CSにV63+を搭載して、その傾向をレビューします。

Suhr V63+ ピックアップのレビュー

Suhr V63+へPU交換をしたきっかけ

 私のS-622CSはSSHスタイルで、リアハムはSuhr Aldrichに交換しました。元のピックアップがどうもキレが無く、ミッドが強すぎかつパワー不足を感じたことと、他のギターがヴィンテージ系が多いので「思いっきりハイパワーにしてやろう」と考えたためです。

 Aldrichはハイパワーなのにバランスが良い謎バランスのピックアップで、ローミッドが厚くありながらギャリっとした成分もあるサウンドです。一方、SAITO GUITARSのS-622CSのネック・ミドルにはGrowlという巻き数を増やしたピックアップが搭載されています。巻き数多めとは言いつつも、すっきりしていて、3-4弦のポールピースがスタガードで高くてフラットな指板にセットするにはPUを放し気味にするほかなく、余計に細い音になりがちでした。

 そうなると、細く鋭いフロントミッドに、厚みがあって超パワーなリアハムで音像が違い過ぎて音作りが難しくなってしまいました。というわけで、ハムバッカーと同じSuhrの中で一番太い音が出そうなSuhr V63+を選んで搭載しました。

Suhr V63+(旧ML)のレビュー

 元々、V63は63年製ストラトに搭載されていたピックアップを再現したものです。60年代後半からの巻き数が減って鋭い音の傾向となるものはV70が担当しており、V63は太い(というかマイルドな)方向性となっています。

 そして、V63をオーバーワウンドしたものがV63+です。マイケル・ランドウが非常に気に入ったということで、彼のサインがパッケージに施されてMLという名前で販売されている時期もありました。マグネットはアルニコV、V63に対して巻き数が増えてより太い方向性になっているものと思われます。

 早速取り付けて弾いてみると、ローミッドからミッドにかけて厚く、しっかりとした音像のピックアップです。ローは多いけどボワボワせず、ストラトらしい「張り」を感じますし、コントローラブルな低音域です。モダンなフラットな指板にマッチするように、高低差は控えめとしてあるマグネットポールピースで、無理なくピックアップを近づけることできます。これにより、無理なく低音域を稼ぎ、高音域の鋭さも出しているのだと思われます。要は、全域がドカッと出ているんです。

 タッチレスポンスも良好です。マイケル・ランドウみたいなテクニシャンが愛用していたことを考えると、ここは心配しなくてよいと思います。パワーがあるけどほどほどというのが、タッチレスポンスが確保されている秘訣だと思います。このあたりも、汎用性の高さに繋がっています。

 ロン・エリスのTL用PUを弾いた時のような「なんだかよく分からない謎エフェクトを感じる」ようなこともなく、V63+のサウンドの基本はストレートで、弾き手と機材でうまく調理してくださいというバランスとなっています。これだけ全域が出ていれば、後処理で何とでもなりそうです。すなわち汎用性が高い。

Suhr V63+のお勧めポイント

 V63+は、いわゆるヴィンテージ系PUに対してローからローミッドが厚いピックアップです。パワーも結構ありつつ、バランスが良好です。これは巻き数(≒抵抗値)を見ると納得がいきます。

Suhr V63+Suhr V63ダンカン SSL-1&2ダンカンSSL-3
マグネットアルニコVアルニコVアルニコVアルニコV
ネック6.5k6.4k6.5k15.8k
ミドル6.5k6.4k
ブリッジ7.2k6.4k

※:ダンカンのSSL-1、2、3にはポジションの指定がありません。

 見てわかるように、意外とV63+って、めちゃ巻き数が多いってわけではないのです。シングルコイルは巻き数の違いに敏感だと思っているので、この微妙な差が大きな差を生んでいる可能性は高いですが、少なくとも「超ハイパワーを狙ったもの」とは大きく異なることが分かります。

 これらの「ちょっとパワフルで」「厚みがあって」「全域が出ていて」「高音域もちゃんとある」バランスが絶妙で、エフェクターのゲインを少し下げても所望の歪み量が得られ、EQが良く効く、そして2バンド、あるいは3バンドのEQで過剰な分を削ってやれば求めているサウンドバランスに辿りつきやすいと思います。

 ちなみに、SSL-1はカリカリとした鋭く、すっきりしたサウンドです。マグネットも抵抗値も近いのにV63+と方向性が全然違います。抵抗値やスペックからだけでは分かり辛いという良い例ですね。

Suhr Aldrich(ハムバッカー)との相性は?

 SSHスタイルのリアハムとして取り付けたAldrichとの相性は悪くないです。太くパワフルなAldrichに対して、太さがあってパワーのあるV63+とマッチするように思います。ただ、Aldrichはかなりのハイパワーなので、音量差を考えると「Suhr SSH」あたりが相性が良いように思います。SSH+はローがかなり厚いので、そちらの方がバランスを取りにくいと思います(が、定番なんですよね)。

 自分はそれほど音量差を気にしないことと、V63+とAldrichは多くの人にとって「許せる」範囲の音量差に収まっていることによって、バランスも良好だと思います。AldrichのタップサウンドはハイパワーPUだけあってそれなりに芯があり、それも全体的なバランスが良好になっている理由のひとつです。

ネックとミドルの両方に「V63+ ネックモデル」を取り付けた

 自分は、ミドル逆相になっているのが好きではなく、今回、ネックとミドルの両方に「V63+ ネックモデル」を取り付けました。これは、V63+のネックとミドルの抵抗値が同じで、おそらく巻き数も同じだから成立した使い方になります。

 ハーフトーンは煌びやかでなかなか良いです。もちろん、RW/WPをミドルに採用した場合に対してノイズには弱くなっていますが、ステージでプレイするわけでもない自分にとっては影響はほとんどなく、満足しています。

最後に評価は?

 超高評価です。とにかく使いやすく、バランスが良い。ここで言うバランスは、調整が決まりやすい(組付けのスイートスポットが広い)、エフェクターのマッチングが幅広い、アンプのマッチングが幅広い、機材次第で軽やかにも太くにもできるという意味です。

 一発弾けば良い音が飛び出してきますし、自分が上手くなれば更に良さが引き出せそうな予感があります。プレーン弦のピッキング具合によって、ギラっと感が出たりとか、何か掴めそうな感じがあるんですよね。

 一方、結構味が濃いので、ギター本体の味が濃くて、それを引き出すためのピックアップとしてはマッチしないかもなぁ…という予感もあります。これは試せていないので、もしかしたら、もうひと化けするかもしれませんけど。

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