弦交換時の定期メンテナンスについて紹介しつつ、指板のメンテナンス剤についての私の考えを紹介します。これについては諸説あります。まじで。何が正しいかは数十年まじめにメンテナンスやってきたプロのみが知るところかと。
私にとってのポイントは、弦を張る前に弦をしっかりと拭くことです。新品の弦は真っ黒です。拭いてから張ればフィーリングも完璧です。

弦交換の周期(自分の場合)
弦交換の周期は人によって結構違います。私の場合は平均して2か月以内に1回というペースです。3か月ぐらいになる場合もそれなりに多いです。1か月以内ってのは少ないかな。大体は、友人とスタジオに入るタイミングなどに合わせて交換しています。弦交換をしたらそのギターをメインに使って、しばらくしたら別のギターの弦を交換して…とローテーションしてることが多いかも。
弦交換をして新品の弦になるとブライトで明るいサウンドとなります。フィンガリングに影響するようなサビが出ていなくても、チョーキングを多用していると伸びてハリが無くなってしまいますので、激しいチョーキングを繰り返す人は早めに交換した方が良いかも。弦が伸びると「ぼよーん」とした丸いサウンドになります。テンションが下がるので弾きやすいのですがね。

弦の寿命を延ばすなら
完全に市民権を得たコーティング弦、特にエリクサーは自分もたまに使います。ただし、ダダリオのEXLとかアーニーボールに比べると、エリクサーの中でも薄いコーティングのOptiwebであっても、ギラッとした成分が抑えられたマイルドなサウンドになります。ダダリオEXLを基準にしてきた人にとっては「結構違うぞ」になると思います。なので、弦の寿命を延ばすためだけにエリクサーを使うのは、個人的には勧めません。もちろん、エリクサーの音が好きな人は問題ないでしょう。試してみるのは良いことです。
私のお勧めは、都度、弦を拭くことです。かなり寿命が長くなります。具体的には、表面のツルツル感が持続します。ちゃんと拭いていれば弦交換までフィンガリングにストレスを覚えることはありません。おすすめは春日のキョンセーム。これはマジでおすすめ。弦を拭くだけなら安価な小さいタイプでOKです。小物入れなどに入れて出先にも持っていきます。
春日のキョンセームは研磨剤などを含みませんが磨く能力がそれなりにあり、コーティング弦はコーティングが削れるかもしれません。ですので、一般的な布を使用するのが良いでしょう。コーティング弦でもフレットや指の汚れが付着して意外と汚れています。
[メンテナンス1]弦交換を開始する前に…
弦交換の前にネックの反りを確認します。反りが出ていたらトラスロッドの調整を行います。そのほか、弦の下(ピックガードやボディー)に汚れがあるか確認しておいて、弦を外したタイミングで拭き取ったりするポイントを知っておきましょう。
弦を外したら一度指板を拭きます。今使っているクリーナーはルシアー駒木さんおすすめの品で、保湿剤はジョン・サーが使っているとのうわさの品。フレットを磨いた後に拭く必要があるのですが、最初にこういったメンテナンス剤で拭いておくのは、後に使うマスキングテープがべったりくっつきすぎることを避けるためです。何事もやりすぎ注意で、軽く拭いて薄く塗り、きっちり拭き上げることを心がけましょう。
今回はローズ指板なので↓のような物を使いますが、メイプル指板の場合は拭き上げるだけです。クリーナーは使うかも。
[メンテナンス2]弦を外してフレットを磨く
状態や自分の作業可能時間を考えて磨かない場合もありますが、自分は9割ぐらいの確率で磨いています。

使っているのはHAPPICHのポリッシュです。これは研磨剤が入っていないらしく、削る力が抑えめでちょうどよいです。マスキングテープは18mmぐらいが一番汎用的かと。今回は1フレットずつ作業するので18mmか、もっと太いものを。全部マスキングしてから作業したいなら細いタイプも用意したいところ。ホームセンターなどで各種買ってみて使い分けてみることをおすすめします。
マスキングテープは接着力が低いものの、それでもそこそこ力があるので、貼る前に手に貼って剥がして接着力を下げることと、作業前に↑のオイルなどで拭いておくことで軽く濡らし、指板やインレイが剝がれることを予防します。
フレット磨きも軽く。HAPPICHのような磨き用のコンパウンドをつけすぎると、フレットと指板の間に入り込んだり、ギブソン系だとフレットオーバーバインディングのせいで、フレットとバインディングの間に入り込んだりして良いことがありません。いっぱい塗っても磨ける能力は変わりません。
HAPPICHはピンク色なのですが、布にチューブの先端を押し付けて、ピンク色が布に少し載るぐらいで十分です。多ければ布同士を叩いて伸ばしてピンクのシミができる程度にします。一度つければ5~10フレットぐらい使えます。
そして、磨いたら綺麗な布できちんと拭き上げます。コンパウンドが残ることが一番ダメ。
[メンテナンス3]弦を張るが、張る前に弦を拭こう(絶対にだ)
自分の弦の張り方は、それだけで1つの記事になりそうなので割愛。
弦を張る前に、ギターの拭き上げも行います。特に弦の下のピックガード部などです。
さて、弦を張る際のポイントとしては、弦をしっかりと拭き上げてから張ることです。理由は、パッケージから取り出した弦は想像以上に汚れており、サビも表面に浮いているため。自分は、BIGBENDSのフレットボードジュースで少し濡れた(先ほど指板を拭いた)布で数回拭いてから、春日のキョンセームで拭き上げます。最初は真っ黒になるので驚くと思います。何回かキョンセームで拭くと汚れが出なくなりますのでそれでOK。
メンテナンス完成
弦の銘柄を変えていなければネックやブリッジのコンディションは変わっていないはず。ストラトのようなフローティングブリッジの場合は弦交換後にブリッジのフローティング具合が変わったりするので都度調整します。
自分は滅多に触りませんけれど、弦が新品の状態でオクターブチューニングを整えるのも良いでしょう。弦が古くなると合わなくなるのは「あるある」で、その状態で弄ってしまうと新品の弦で狂っているということにもなります。メンテが適当なショップが古い弦でオクターブを合わせた状態で販売して、1回目の弦交換時にオクターブチューニングが必要になるなんてこともあります(苦笑)
完成したら弾きましょう!! 新品の弦の音は最高です。
指板のメンテナンスは流派や諸説あるやつ
指板のメンテナンスは適当なことを言うと荒れるテーマだと思っています(苦笑)
個人的には「最高のものは無いので、色々と使って平均化する」のが好きです。これはレザーのメンテナンスで感じたことを流用しています。レザーも自然由来の素材であり、メンテナンス用品も多様です。指板と結構近い。メンテナンス用品の原材料も近いんですよ。蜜蝋系や自然由来のオイル、カルバナワックス、石油由来のオイルなどなど。レザーに関して言えば、蜜蝋やオイル系ばかりでメンテすると水分が不足してバランスが悪くなるということがあります。なので、乳化されたクリームも使ったりしてコンディションを整えないとだめ。これは結構有名な話。
指板に話を戻すと、レザーと違って水分の含まれたものはほとんどなく、しいて言えばクリーナーかな。王道はレモンオイル系。海外ではライターオイル(ベンジン)で汚れを浮かせるなんてことも定番です。レモンオイルといっても様々で、乾きが早いものもあり、汚れ落としには良いけど保湿としてはあまり効果が無いものが多いと感じています。蜜蝋をはじめとしたワックス系は残るのがネックで、毎度毎度たっぷりと使っていると残りすぎると想像しています。石油系は「自然素材の木に石油系のオイルを塗るなんて!」という意見もあり、理解はしていますが……。
というわけで、色々と考えて「残りすぎたものを取るためにクリーニングをすること」「ワックス系はほどほどに」「BIGBENDSはジョン・サーが使ってんだぞ!大丈夫やろ!」「量を塗りすぎ、高い頻度で塗りすぎが最も悪いので、塗ったらきっちり拭き上げる」という考えで行っています。弦交換の周期が2~3か月ってのも考慮しています。1ヵ月以内に定期的に替えている人は、数回に1度にメンテナンスするぐらいがちょうどよいかもしれません。最も良いことは弾いて手の脂と水分で保湿することです。これは割とまじめに言っています。