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ギターアンプの電源ケーブルを変えると音は変わるか実験[Mercury MAGNETICS Copper-Tone HD]

オーディオではメジャーな「電源ケーブルのグレードアップ」。マーキュリーがギター(ベース)アンプ向け商品として交換用ケーブルをリリースしているので試してみました。比較対象として、歪みが得意な真空管アンプMesa/Boogie Mark Five:25と、シンプルな小出力真空管アンプのVOXのLil’ Night Train、トランジスタアンプRoland JC-22と色々と用意してみました。

交換した感想としては「思ったより変わる」「大体の場合は、厚みが出るというか、暖かみのある音になる」というものでした。

アンプの電源ケーブル交換をしてみたきっかけ

 ギターではなくオーディオ界隈では電源ケーブル(AC100Vを機材に届けるケーブル)の変更はメジャーで、ものすごく高価なケーブルも販売されています。そういうものが売れるのであれば、たぶん変わるのだろうという認識でおりました。

 電気系をかじっている人間としては、電源を良い環境にすることは装置の性能を引き出すために重要だと思っています。一方で、最低限のレベルをクリアしていていたら「言うほど変わるのか?」という認識でもあります。要は、変わるかもという気持ちと、変わらんという気持ちがせめぎ合っていたのです。ならば試しましょうと。

 Mercury MAGNETICS Copper-Tone HD(以下マーキュリー)は(日本では)主にギター・ベース向けに展開されている電源ケーブルというレアな存在です。ちょっと変わるというレビューも見かけまして「付属のケーブルが(安全だけど音質にとっては)最低限のレベルに達していないかも?それならば変えてみると面白いかも?」と考えて、そんなに高くないのでトライしてみました。

※一応注意書き。「ハイエンドな電源ケーブルを用いるとアンプのヒューズが飛ぶ」ということが言われているので交換は自己責任で。でもそれって電源ケーブルがボトルネックになってた『しょぼい設計』だと思うのですがね。あ、でも、その状態でギリギリ成立していたヴィンテージとかではあり得るかもしれないので、注意ください。

実験に用いたギターアンプ一覧

 実験対象としたギターアンプは3つです。

・VOX Lil’ Night Train(2W 真空管)
・Roland JC-22(30W トランジスタ)

・Mesa/Boogie Mark Five:25 (MAX 25W 真空管)

 マイナーなものが並んでいますが、小出力でシンプルなVOX、トランジスタのJC-22、比較的大きな出力でハイエンド系のメサ/ブギーと、比較としてはバランスが取れていると思っています。

VOX Lil’ Night Trainの電源ケーブルをMercury MAGNETICS Copper-Tone HDに交換した際の音の変化

 VOX Lil’ Night Trainは、12AX7が2本、12AU7が1本、ブライトモードで効く2バンドEQで、シックにするとEQがスルーされて太いサウンドになります。

 比較すると「思っていたよりも差が出るなぁ」という印象です。

 純正は鋭く、細い印象で、マーキュリーは太く、温かなサウンドです。マーキュリーの状態でフルアコのGibson ES-175を繋いでフロントでジャズなどを弾くと、ボディーの鳴りの太さがでて、ローミッドに僅かに厚みが出ます。

 「差がある」といっても僅かではありますが、ブラインドテストで何度も弾き比べると分かりそうなレベルの違いはあります。

Roland JC-22の電源ケーブルをMercury MAGNETICS Copper-Tone HDに交換した際の音の変化

 クリーンでは「変わったか?プラシーボかも?」というレベルでした。一方で、エフェクターを前に挟んでディストーションサウンドにした場合に差を感じました。比較に用いたのはEMMAのReezaFRATzitz 2です。

 ReezaFRATzitz 2を結構ハイゲインに設定して、低音を抑えめ(Reezaは低音が強いので)にして比べたところ、純正に対してマーキュリーはローミッドが厚いです。より正確には、偶数次倍音が増えたかのような、温かさや厚み、ローミッドの充実感を感じます。それに対して純正は鋭く、刺さる印象もあります。

 JC-22のEQは、かなり低い音域に効くBASSと、ハイミッドあたりに効いてギターのメインの音域を支えるMID、パリーンとした鋭さに効くTREBLEで構成されています。こうなった場合に、マーキュリーに替えたときに出てくるふくよかさや厚みを直接的に調整するEQが無く、それを狙うなら交換してみるのはアリだと感じました。

 トランジスタアンプでは、AC100Vを取り込んで平滑化して、何かしらの電源ICや電源モジュールで任意の電圧に落としているはずで、電源ケーブルが変わっても電源部分での電圧の変換には影響を与えないだろうと思っていたのですが、その結果は意外なものでした。

Mesa/Boogie Mark Five:25の電源ケーブルをMercury MAGNETICS Copper-Tone HDに交換した際の音の変化

 他のモデルでも同様ですが、スタジオでは比較できていないので家での小音量での比較となります。

 ヘビーでハイゲインなディストーションサウンドに設定した状態で比べると、パワーコードでズンズンやったときに、純正ではキツイ鋭さが出やすく、マーキュリーでは厚みがあります。丸くなるというよりも、鋭い音の周りにまとわりついた成分が増すとか、ミッド(ど真ん中)が少し出るような印象です。クリーンは、VOX Lil’ Night Trainの時ほどの差は感じません。総じてマーキュリーの方が厚みが出る感じ。

 とはいえ、メサ/ブギーは入力直後についている各EQと出力手前の5バンドEQが強力で、これぐらいの差は吸収できそうだとは思います。

電源ケーブルを交換して比較してみた感想

 思ったよりも差が出ました。分かりやすかったのはVOX Lil’ Night Trainです。これは、回路がシンプルであること、安価なモデルなので電源系にお金がかけられていないことが理由ではないか?と感じています。

 VOX Lil’ Night TrainはEQが簡易的なものであるため、細かく調整して音を追い込むということが難しいです。シックモードですとEQも効かなくなります。そういう場合には、電源ケーブルのちょっとした差が意外にも重要になるかもしれません。

 肯定的に評価しましたし、個人的にも良い方向に変わったと思っていますが、万人に勧められるか?と考えると、そうでもないと思います。というのも、Lil’ Night Trainのシックモードでは低音をあまりカットせずに、ゲインを上げると「ボワ―」という締りの無いサウンドになるため、電源ケーブルで太くなるとコントロールが難しくなる可能性があるためです。クリーンだと気持ちが良いのですがね。

 それに、純正のすっきりとしたサウンドの方が抜けが良いと考える人も多いでしょうし、後処理で調整しやすいという人もいることでしょう。

 マーキュリーで「音に厚みが出た」ということは「純正では厚みを出すための何かが不足していた」という可能性があり、性能が高いケーブルによってそこが「解放された」と私は考えています。ですので、自分の持っているアンプのポテンシャルを感じてみたいという人や、シンプルなアンプで「もうちょっと」というところにトライしてみたい人は、試してみても面白いのでは?と思います。一方で、どう変わるかはアンプによって異なると思われますから、今回の記事を参考に「音を狙った方向に変えてやろう!」と意気込むのは、ちょっと前のめりすぎるかもしれません。

 変化の度合いとしては、弦を変えたり、ギターのセッティングを変えた方がよほど差が大きいので、見直すとしたら先にそちらではないか?とも考えています。

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