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Fender Custom Shop Fat ’60s Stratocaster Pickup レビュー

Fender American Vintage 62 Stratocasterに「Fender Custom Shop Fat ’60s Stratocaster Pickup」を搭載したのでレビューします。いわゆるFat ’60と言われる奴で、フェンダーのカスタムショップ製ギターに結構な頻度で搭載されているピックアップです。総じて評価・人気が高く、小規模メーカーの高価格帯PUに比べれば値段も比較的手ごろということで試してみました。

結果は大成功で、深みがあって立体感があり、ミッドが強く、必要な高音域のキレもあります。パワー感というよりもトルクというか、粘り強いサウンドで大変気に入りました。高評価です。

結局譲ってもらった’97の62アメヴィン

 以前の記事にしたメンテナンスをした友人の1997年製 Fender American Vintage 62 Stratocasterなのですが、私が「売るなら買うわ」と言っていたのもあって、譲ってもらうことになりました。その友人は本数を減らしつつ「良いストラトは必要かな…」とか「憧れのレスポールカスタムか…?」「いやPRSか?」となっているのは、また別のお話。

Fender Custom Shop Fat ’60s Stratocaster Pickupを搭載した

 買い取った1997年製 Fender American Vintage 62 Stratocasterについては、↑の記事を読んでいただけるとよいのですが、記事が長いので音の印象をこちらでおさらいしましょう。

 このギターは3.8kgぐらいあって結構重い個体です。そのせいもあってか、音がストレートで鋭いです。旨味が少なく、あまり好みではないキツイ芯がある印象でした。ブリッジ周りの変更によってジャーンと倍音の多い響きが得られるようなったのですが、それでもミッドの旨味が足りない印象でした。

 そんな話をFenderオタクの別の友人にしたところ「FAT ’60sとかどうよ?」とおすすめされたのでした。というわけで購入して搭載です。

Fender Custom Shop Fat ’60s Stratocaster Pickupのスペックとレビュー

 そんなこんながありまして重めのアルダーローズのストラトキャスターに搭載したレビューです。スペックをおさらいするとこんな感じ。

マグネット:アルニコ2
DC抵抗値:各6.7kΩ

 コントロールは、Vol、フロント・センタートーン、リアトーンとなっています。Volは250kΩ、フロント・センタートーンは250kΩ+0.047μF(セラミックス)と標準的です。

 バーンと弾いてみて立体感があると感じました。この立体感は、かなり低音まで出ていることで各音の周りにまとわりつくようなサウンドがあるためだと感じました。巻弦、特に5~6弦の低音の厚みというよりも深みがあります。一方、低いローミッドとかローはある程度抑えられており、フロントで弾いた時にブーミーになりすぎたりする感じはありませんでした。巻弦特有のギャリっとした成分も出ています。

 私は一人でぽろぽろと弾く程度、かつフロントはクリーンか滲む程度に歪ませる派ですので、低音が多めであっても飽和したり破綻せず、むしろ低音が出ている方が気持ちが良いと感じたのかもしれません。アンサンブルの中での演奏を前提とする人や、それなりにフロントでも歪ませる人には「低音出すぎ」と感じるかも。

 1~3弦のプレーン弦は丸く、でもパリッとした芯や艶があります。元のピックアップにあった硬さや変な芯を0.5mmのボールペンで弾いた線だとすると、Fat ’60はサインペンとか筆ペンのようです。注意したいのは、多くのストラト用ピックアップがそうであるように、3弦が強くて2弦が弱い。弱くなると、私が良いと思っている芯のある太さが「ボヤっとした感じ」になることもありました。

 その観点からは1弦と3弦は芯があって、太くて艶があるけど、2弦はもやっとしがちと書いた方が良いかもしれません。

 中低音~中音域が強いからか結構パワーがあるように感じ、TS系のようなODや適当なディストーションを繋ぐと倍音がグイっと持ち上がって太さに拍車がかかります。ギターから出る倍音成分が増えたせいか、TSとの相性が良く、ジュワッと滲むように歪み、厚みがあって甘いサウンドです。トーンを上げるとギラリとしたキレの良さも出てきます。これは良いわ。

 ブリッジピックアップにはトーンが効くように配線変更をしており、トーンPOT300kΩ+0.022μF(オイルコン)を搭載しています。いわゆる「P90風」の配線です。良く知られているように、トーンは回路が入っているだけで高音域を削っています(トーン全開でもカットする周波数がPU出力にかかっている)。一方、このギターではシングルの標準である250kΩ+0.047μFよりも高音を残す設定になっているため、ジャキっとした鋭さを残しながら、嫌なキンキンした成分を抑えたバランスになっています。

 自分で言うのもなんですが、割とパワーのあるFat ’60sのブリッジPUにはこれがバランスが良く、太さと鋭さが共存したサウンドで、ちょっとP90風とか、ローパワーハムバッカー風になって、ハードロックレベルに歪ませても良い音になってくれます。これは嬉しい誤算でした。

(後で気が付いたのですが、全PUは6.7kΩで共通で、特別にブリッジがハイパワーってわけでも無いのですね。ブリッジPUを上げ目にして設定したのが効いたのかもしれません。)

 ハーフトーンがかなり良く、鈴なりが出ます。太さがほどほどに残るのか、シャリシャリとかパキパキせずに、シャキーンと軽やかながら旨味が残る印象です。これで低音が出るファズフェイス系(Roshi Pedals SMUG FACE Ge)などと合わせると、ストラトでみんなやりたいあのサウンドになります。

Suhr V63+(旧ML)との比較

 私はSAITO GUITARS S622CSのフロントとミドルにSuhr V63+を搭載して愛用しています。レビューはこちら。

 Suhr V63+は全域がどかっと出るバランスで、低音もそこそこ出ていると感じていました。しかし、Fat ’60sと比較すると、かなり低い低音はV63+では少ないと感じました。これは、S622CSのマイルドで低音が控えめなボディーに由来するものかもしれません。

 V63+は低い低音があまり出ていない分、すっきりと見通しが良い印象で、一人でクリーンで弾く分にはFat ’60sの方が立体感や奥行きがあって気持ちが良いです。対してV63+は録音して後処理するのに非常に便利なんだろうなぁと思うまとまった印象があります。一長一短ですね。

 V63+のポールピースは3、4弦を頂点になだらかに並んでおり、各弦のバランスが良いです。S622CSのフラットな指板ともマッチして、音量バランスやゲイン感がちょうどよいです。この点は、ストラトを弾きなれていない私にとって使いやすいです。Fat ’60sは2弦が弱いというクラシカルな感じで、どうにもまだ慣れていないです。

レビューのまとめ

 ギター由来の固めで鋭いサウンドが、Fender Custom Shop Fat ’60s Stratocaster Pickupの低い低音が豊かで、太く、まろやかな特性とマッチしたのか、巻弦は太いけど芯があり、プレーン弦は甘くて鋭さもあるバランスになったのかもしれません。

 まとめると、深みがあって立体感があり、ミッドが強く、必要な高音域のキレもあります。パワー感というよりもトルクというか、粘り強いサウンドで大変気に入りました。高評価です。

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