不安定さのあるクルーソンタイプペグの固定を確実にするゴトー C.A.R.Dを取り付けました。SD91に適合するこの部品は、ボディー側の穴の隙間を埋めて、クルーソンペグのボディー部分を確実にヘッドに固定するためのものとなります。上位モデルのSD510ペグには純正採用されるC.A.R.Dは、取り付けることによって、サウンドが引き締まり、タッチの反応が良くなりました。取り付け方法も解説します。

Gotoh(ゴトー)の ペグ用部品「C.A.R.D」とは?
Gotoh(ゴトー)の ペグ用部品「C.A.R.D」とは、ヘッド部分とペグの間の隙間を埋めて、固定を確実にするための部品です。ゴトー用ペグ、今回購入したものはSD91専用部品となります。
クルーソンタイプのペグは、大きめの穴にペグを挿し込んで、裏から小さなねじで留めているだけであり、底部分も真っ直ぐではないので隙間が存在しています。そこで、この黒い樹脂部品で隙間を埋めるわけです。ゴトーペグの最上位モデルのSD510ペグには純正採用されていますが、SD91ではオプションとして販売されています。
Gotoh(ゴトー)「C.A.R.D」の外観

C.A.R.Dは、写真のように、プレートにペグを通す穴があり、そこから穴の隙間に刺さる突起がついています。黒い樹脂はザラザラしたような見た目で、これはカーボンがたくさん含まれた樹脂ですね。カーボンを混ぜると樹脂が硬くなり、強度が増します。つまり、強度のある部品で穴を埋めるわけです。樹脂+カーボンですので軽いです。
Gotoh(ゴトー)「C.A.R.D」の取り付け
取り付けるのは、SAITO GUITARS S-622CSで、純正状態からゴトーのSD91が採用されています。
取り付けは簡単です。まず、弦を外し、ペグを留めている小さいねじを外します。


ペグを外すと、ペグの縁が当たっていた部分が少し凹んでおり、ここだけでペグが支えられて留まっているのが分かります。関係ないですが、メイプルが日焼けしていますね。もうひとつ関係ないですが、ねじ穴は面取りされています。SAITO GUITARSさん、丁寧ですね。穴もキレイ。奥にヘッド表側のブッシュが見えます。

時系列が前後しますが、1つペグを外して仮付けした状態です。このように取り付けられます。ちなみに、C.A.R.Dなしの状態で固定ねじを外すと、ペグは結構グラグラします。

全部ペグを外して、C.A.R.Dを挿し込みます。感触は「スッ」って感じで、パチンという感触はありません。SAITOさんの加工精度が高いのか、ぐらつくことも無く、ピタッと入ります。取り外すのが面倒なぐらいのピッタリ感。

ねじ留め前の状態で遊びが無くなって、軸がグラグラすることは無くなります。クルーソンタイプはペグ裏に少し空間があるのですが、そこにハマるような構造です。ねじ留めすると、C.A.R.Dが入った分だけ少し浮いているようにも見えますが、知っていないとC.A.R.Dが入っているのは分かりません。
全て終われば弦を張り直します。
Gotoh(ゴトー)「C.A.R.D」の効果のレビュー
こういう部品は、取り付けてから馴染んでくる時間が必要なので少し弾きます。すると変化を感じるようなってきました。最初に気づいたのは、クリップチューナーの安定性が上がったこと。電池が弱ってきて捕捉が怪しくなってきたチューナーでもバシッと拾うようになりました。これは期待できます。
私のSAITO GUITARS S-622CSは、Suhrのピックアップを取り付けて、反応が早く、芯のある、クリアで、高音の抜けの良いサウンドになっていました。C.A.R.D取り付け前に適当に録音しておいて、C.A.R.Dを取り付けて比較のために録音して聴いてみました。
すると、元の音が若干丸く、ぼやっとしたように感じるほど、C.A.R.D取り付けで立ち上がりが良くなり、高音のキレが出ました。こう書くと心配されそうなのは「キンキンするのでは?」ということですが、耳に痛いキンキンする音域よりも少し低い、キラリとした鋭さを演出する部分が出て、いわゆるハイからハイミッドにかけても少し出て、抜けの良さに磨きがかかったような印象です。切れ味のなまったナイフを研ぎ直したような感想で、ハイからミッドにかけての密度が増したようにも思います。
低音域に関しては「低音が出るようになった!」というほどの変化は感じず、ルーズな低音が引き締まったような印象を受けました。私のS-622CSがボディーもPUの特性も低音が控えめだったのでこれぐらいの印象だったのかも。低音がゴリゴリ出るギターだとどうなっていたのかは不明です。
なお、生音も変化しました。それまでがポーンという音だったとするとパーンとかカーンというアタックの鋭い成分が出ている音になり、煌びやかで、こちらも反応が良くなった印象です。
「C.A.R.D」を取り付けた感想
非常に満足しています。取り付け前から抜けるサウンドが魅力的だったのですが、それに磨きがかかり、細くならず、芯があって抜けてきて、澄んだサウンドになりました。また、弱く弾いた時、強く弾いた時の反応が良く、非常にレスポンスが良いです。
注意すべきは、すべてのギターにマッチするか?と問われるとそうではないと思うことです。SAITOの加工精度が高くて簡単に取りつきましたが、そうではないギターも多いことでしょう。また、クルーソンタイプのルーズな取り付け方法は、それ故のサウンドが「ヴィンテージっぽさ」を生み出しているとも考えられます。どこか逃げがあって、弾いた時の音に頭打ち感があって、それが特有の倍音構成(ある部分が無くて、ある部分に倍音が乗る)を生み出していた可能性が非常に高い。
C.A.R.Dを取り付けることにより、音が整理されて、確実にモダンな方向に変わります。弱く弾けば弱く鳴るけど弱弱しくなく、しっかりとクリアに鳴ります。これはちょっと上質なコンプをかけたかのような感じ。強く弾いた場合も強くなるように受け止めてくれているように感じ、ダイナミックレンジが広がったようにも思います。
実際にセッションで弾いてみて、友人から抜けてくる、整った、澄んだサウンドが非常に高評価を受けました。これは一般的に言われる「ヴィンテージっぽさ」とは違う方向性になります。
これらの点を理解して「嫌なら外せばよいか」と思える方は、トライしてみる価値があります。