各所で絶賛のレビューが上がっている超定番オーバードライブのJan Ray。購入時に魅力を感じつつも「絶賛されるほどかなぁ?」と疑問に思うポイントが残されていたのも事実。それからじっくりと向き合うことで自分の未熟さを再認識しつつ、各設定の特性が分かってきて「あぁやっぱり良いものなんだな」ということを理解してきました。

Jan Rayはトランスペアレント系の代表格とされるが……
VEMURAMのJan Rayは、ハイとローの2EQを持ち、回路のベースはトランスペアレント系のTimmyであることもあって、トランスペアレント系に分類されるというのが一般的です。多くのミュージシャンに愛用されて評価も高く、トランスペアレント系の代表格として挙げられることが多いです。
元になったTimmyの味付けは非常に薄く、それなりのアンプの前に配置することで「煌びやかさや旨味を足して良いアンプになったような感じにする」という点が評価された経緯があります。しかし、その味付けが薄いことから、現行品として販売されていた時代には評価が分かれていたというのが、わたくし、おっさんの記憶するところです。
その感覚でJan Rayを踏むと、味の濃さを強く感じます。具体的には中低音域が厚い点です。ただし、かなり低い音域は少なく、それが「低音は多くなくて締まっている」という評価に繋がっていると思います。個人的な感想は「どこからを低音とするかによって、低音が強いか弱いかの判断が変わるなぁ」と思っています。
また、筐体上部の可変抵抗によるサチュレーションによってキャラクターが大きく変わり、ギラギラしたサウンドからマイルド、悪く言うと籠ったようなサウンドに変わり、このことも「トランスペアレント=音を変えないと考えると、トランスペアレントではないのでは?」と思ったりもします。
TS系でもケンタウロス系でもRAT系でもマフ系でも何でもそうですが、サウンドを基準に分類するか、回路を基準に分類するかという視点があり、どちらも間違いではないので、Jan Rayをトランスペアレント系に分類することには異論はありません。
私のこれまでのJan Rayに対する感想
これまで「Jan Rayはトランスペアレント系なんだから、トランスペアレントっぽく使いたい」という考えと、歪み系はそこそこしっかりと歪ませて使うというスタンスで向き合ってきました。そうなると、BASSは絞り気味、ゲインは上げ気味として使うことが多かったです。
Jan Rayの歪み方は、悪いものではないものの、ゲインを上げると割と平坦に、ジリジリジリとファズっぽさを含みながら歪むものです。BASSを絞っていたことによって、歪みにまとわりつく旨味みたいなものが減ってしまっていた可能性もあります。
このようなことから、いまいちJan Rayの良さが分からないと思うなどしていました。
Jan Rayをローゲインで使うことで分かってきたこと
最近は、歪み系も「歪むか歪まないか、滲んだようなサウンド」で設定することが多くなりました。ギター側のボリュームの使い方も分かってきたというのもあります。また、Jan Rayの特性に向き合ってみようとEQを共に12時に設定するように使い始めました。使い始めた当初はSaturation(筐体上部にあるトリマー)を下げる=ダークな雰囲気にしていましたが、現在は上げる=明るく、ジャリっとするサウンド傾向に設定するようになりました。
すると、サウンドを下支えする低音域が出始めたのか、高音域の煌びやかさが立ったからなのか、立体感が出てくるように感じました。そうしますと、最近自分が重視している音の立体感が得られるようになり「なぁんだ、自分の設定の影響だったのか」と感じるようになってきました。EQをフラットにすることでJan Rayのサウンドキャラクターが前面に出てきて、ローミッドに厚さのある旨味を感じることができるようになってきました。
ただしこれはゲインを低めに設定した場合で、ゲインを上げてゆくと立体感が失われてゆく傾向にあります。とはいえですね、ODの多くはそういうものだと思いますからJan Rayのネガティブポイントとは考えていません。
もう少しこうだったらなぁと思うポイントとしては、クリーンから歪む感じへ移行する時のリニアさがあれば…という点です。Saturationを下げるとその傾向に近づくものの立体感重視の自分としては物足りなくなり、上げると「バリン」という唐突感のある歪みになってきます。基本的に平均点以上ではありますが、言語化しにくい「なんかちょっと、こう…滲む感じが出やすいと嬉しい」という感想を持っています。
全体を通して
そのほか上では触れられませんでしたが、ヴィンテージ系のローパワーなPUでも、力強く太いサウンドのモダンなPUでもマッチしやすく、EQによって落としどころを見つけやすいと思っています。
良いオーバードライブであることは間違いありません。良く効くEQによって環境に合わせやすく、設定によっては立体感も得られます。はっきりとしたサウンドキャラクターがあり、Jan Rayのサウンドが好みですと繋げば好きなサウンドに持っていけるというメリットがあります。
これらの特徴は、出先でパッと良い音を出す必要がある人や、味付けの薄いアンプやPCへのインターフェイスを用いる人には適した特性であるように思います。そう考えると確かに「プロが愛用」かつ「機材好きのお家ギタリスト御用達」となるのもうなづけます。平均点が高く、サウンドの軸を作る要素として安心感を与えてくれるイメージ。
一方、私のようなこじらせた機材好きとなると、Jan Rayだけが持つような飛び抜けた特性を持っているような感触が得られておらず、私はまだ「絶対外せない最高の選択肢」とまでは至っていません。などと記事を書いてはいますが、1~2年後には『やっぱこれ最高だわ』とか言っている可能性は否定できません。その際はこの記事を書いている頃の自分が未熟だったと笑いつつ、Vemuramのその時の新作を買うことにしましょう。