CULTの新作「ARMS」買ってしまいました。ARMSは、細川氏が長く連れ添ってきて、かつベストなサウンドというラムズヘッドのサウンドを再現したもの(V2)が基本となります。そして、トライアングル期を模したV1と、細川氏が「嫌なことがあったときにぶっ放したいサウンド(意訳)」のD2、D2がクセが強すぎるので使いやすくしたD1という構成になっています。V2の鋭く、低音が出て押し出し感のある、迫力のあるサウンドが非常に良いです。

CULT 4作目 ビッグマフ系ペダル「ARMS」
ペダルフリークとして知られる細川氏が、ペダルフリークに向けた魅力的なペダルを販売するCULTの完全オリジナルペダルです。オーバードライブの「Ray」、プレキシマーシャル系の「Tempest」、Tempestをベース用にチューニングした「Lux」、そして4作目がビッグマフ系の「ARMS」です。
各モデルは同じ筐体デザインとなっています。筐体にめり込んで飛び出しの小さい4ノブ、フットスイッチ、そして超々ジェラルミン削り出しのケースとなっています。加工費がくそ高い超々ジェラルミン削り出しを用いているのは、音のためというわけでもなく、細川氏いわく「作りたかったから」だそうです。(参考動画) ただ、その特徴もあってか、全般的にカチッとした硬さや芯の強さが出ているという話もあります。
さて、ARMSは、細川氏が長く連れ添ってきて、かつベストなサウンドというラムズヘッドのサウンドを再現したものが基本となります。で、この個体というのが以下の動画で登場しています。
そして、島村楽器 名古屋パルコ店でのイベントで実物に触れたことがあります。詳しくはレビューの方で述べていきましょう。
CULT ARMS V2モードのレビュー
まず前置きとして、ARMSの製作が実現したのは、狙った音が出るトランジスタを見つけたためとのことです。その数にも限りがあるため、ロットによってはトランジスタが変更になり、サウンドも変わっている可能性があります。私の個体は、初期ロットの2024年末製です。
右下のコントロールはモード切替です。V2が細川氏所有のラムズヘッドのサウンドを狙ったモードです。マフ系としてはゲインが高いです。また、低音と高音が共にパワフルです。低音は強いものの、ローミッドのもさもさとした感じが無く、締まっているというか攻撃的な低音域です。高音域は「本当に現行機か?」と思うぐらいのヴィンテージっぽい粗さと鋭さ、そして複雑さを含んでいます。鋭いけれどキンキンするわけではなく、ザラっとした偶発性を含んでいます。ゲインを上げるとマフの真骨頂という領域ですが、ゲインを下げてもすばらしく、枯れてパサパサとしたようなテクスチャーを持った歪みとなります。
トーンの効きが使いやすいです。左に回すと鋭さを残しながら若干マイルドになり、右に回するとよい感じのミッドがありながら鋭さが増してゆきます。こう書くと効きが悪いように聞こえるかもしれませんが、ちゃんと効くのが面白いところです。
前段にTS系とかでブーストするのも非常に気持ちよく、歪みの質が鋭く、そして整う印象で「これをハイゲインなアンプライクなディストーションとして使うのも良さそう」と思わせてくれます。
ただしこれらは、エフェクターのボリュームをそれなりに上げた状態でのレビューです。ボリュームを下げると切っ先が丸まり、クリーミーな印象に変化します。とはいえ、V2モードの音量はクソデカではなく、扱いやすい領域です。
CULT ARMS V1モードのレビュー
V1はトライアングル期の再現となります。V2からモードを変えると音量がぐっと上り、ギャリギャリとした粒が細かく、そして鋭い歪み成分が一気に盛り上がってきます。ローやローミッドも厚みがあり、スカスカした感じになりにくいです。
トーンを左に回してマイルドにしようとしても、この細かく鋭い歪みが相当に残ります。これは想定外でした。そしてローからローミッドの張り出しが強くなり、音量が上がってくる感触があります。トライアングル系を愛用する人の中にも「トライアングルらしいジャリジャリ感とローの厚みを共存させたい!」と思う人も多いのかな?と想像しているのですが、そういう方に合うと思われます。トーンを右に回していくと、ヒステリックに金属的な高音域が持ち上がって低音域が削られていきます。しかし、こう、音の芯というか、強さは残っているのを感じます。
V1はビッグマフのファズとしての側面が強く出たモードだし、そういう時期であると思っており、それが反映されています。だた、この細かくて整っていて(でも優等生でない)歪み方は、あまり感じたことのないものですので、V1モードが本作の1つのモードに留まっているのはもったいない気もします。
CULT ARMS D1、D2モードのレビュー
D2は細川氏が「嫌なことがあったときにぶっ放したいサウンド(意訳)」として想像したもので、D2があまりにもぶっ飛んだサウンドなのでD1は、もう少し使いやすくまとめたサウンドとのことです。
正直に言うと、D1、D2共に私には扱えそうになかったです(苦笑) 自分が初めてFAZZ FACEと向き合った時ぐらいに困惑しました。まず、D1にするとV1から音量がさらに大きくなります。V1ともV2とも違う(どちらかというとV2系かな?)歪みの荒々しさと粒度感です。最も特徴的なのが信号が飽和して音にならないような「ゴッゴッゴッゴッ」という不穏な音?が出ます。D2にすると、その傾向がさらに顕著になります。いわゆるゲート感と違うけど、似てるものはそれぐらいしかないのかなぁという感想。何を言っているか分からないと思うのですが、下の動画を見てもらうと分かってもらえるかと。こんなもん、上手く取り入れられるようなセンスは私には無いですよ。
ただ、これを上手く取り入れられるような人は、これにしか出せない音だと思いますから、最高の相棒になるかと思います。
全体を通して
特有の鋭さや、ファズっぽい偶発性(均一ではない成分)を含んでおり、荒々しさがあります。一方、どことなく、一本筋が通ったような、決して整っているわけではないのですが、まとまりというか軸というか、そういうものを感じ、そこにモダンさや現代的なハイエンド系ペダルの匂いを感じます。
FUZZなんてものは、酔狂な趣味人の戯れですから、欲しいなと思ったら試すか買うのが良いです。とはいえ、CULTのペダルは試せる場所がほとんどないので困りものなのですが…。合わなかったなぁと思ったら他をあたるしかないのです…。失敗したくないなぁというのは既に矛盾をはらんでいるのです。
冗談はほどほどにして、ファズの中では比較的とっつきやすく、扱いやすいビッグマフ系であり、V2とV1のサウンドは特徴的ではありますがかなり使いやすいです。D1、D2はまぁ、たまに爆音を出したいときに鳴らしてください。