ジュリアン・ラージのシグネチャーモデル Ron Ellis Standard Plus JL(テレキャスター用ネックPU)のレビュー

テレキャスター用ネックPUであるRon Ellis Standard Plus JLを購入しました。このサイトに検索で来られた人は、このピックアップが何であるかはご存じでしょう。ブラックガードタイプのテレキャスターを愛用するジュリアン・ラージのモデルとなります。自分も、ブラックガードタイプ(アッシュ/メイプル)のテレキャスターに取り付けてのレビューです。テレキャスター特有の深い、奥から鳴ってくるような低音を拾ってくれる点と、立体感のある高音域が特徴です。

Ron Ellis Standard Plus JL

ジュリアン・ラージとRon Ellis(ロン・エリス)のピックアップについて

 基本的にジュリアン・ラージのことをご存じの前提で話をさせていただきますが…

 ジュリアン・ラージは、2010年代前半まではフルアコやアコギをメインに使用していましたが、中盤以降になるとソリッドギターへの転向が図られます。転向後のメインは1954年製テレキャスターです。下は私がジュリアン・ラージを知るきっかけとなった「Nocturne」のライブ映像で、そのテレキャスターを弾いている様子が見られます。この映像は2016年とのことで、ソリッドギターを使い始めてすぐ頃と考えられますね。また、バックアップやツアー用にレプリカの「ドナキャスター」を入手しています。このドナキャスターに、ジュリアン本人が所有する1954年製テレキャスターを再現したRon Ellisのピックアップ(=Standard Plus JL)がインストールされました。

 加えて、ドナキャスターよりも有名な(というか代名詞みたいになっている)Nocho Guitarsの「ナチョキャスター」も使用するようになります。いつごろからか、ナチョキャスター(ドナキャスターも?)のフロントのザグリは広げられ、P90タイプのピックアップやミニハムが搭載されたりしています。1つめは5年前の映像でハムバッカーが載っています(が、ドナキャスターかナチョキャスターかは分かりません… 指板の雰囲気からドナキャスターじゃないかな?)。2つめが2024年時点で最新に近い映像。代名詞になっているナチョキャスターにP90タイプのピックアップです。

ジュリアン・ラージのサウンドを狙うなら?

 最初からちゃぶ台をひっくり返しますが、最近のジュリアンラージサウンドといいますか、本人仕様!!ってのを狙うならRon Ellis Standard Plus JLを選ぶべきではありません。フロントにはP90タイプのピックアップを載せる方が本人仕様です。

 ジュリアン・ラージはインタビューなどで、コリングスのシグネチャー(470JL)に取り付けられたピックアップや、ゴールドトップにP90が搭載されたレスポールに比べて、テレキャスターのオリジナルPUの出力が小さく、併用ができないとして、もう少し出力が出て470JLと同じテイストのサウンドが出る特性のEllisonic P90をフロントに搭載したと語っています。このEllisonic P90はマグネットポールピースを使っている(GibsonのP90は鉄製のネジがポールピース)ため、フェンダー系のシングルコイルっぽさがあり、一般的なP90よりもすっきりとアコースティックなサウンドのようですね。

 「ジュリアン・ラージと言えばEllisonic P90!」とみんな思っているようで、Ellisonic P90は入荷したら即売れになっています。くそ高いのに…怖い。

Ron Ellis Standard Plus JLのレビュー

 自分は、Nocturneのサウンドに魅せられた人ですし、自分のテレキャスターもそこそこ特別な個体ですからザグリたくないので、Ron Ellis Standard Plus JLを選びました。

 一般的に、テレキャスターってブリッジPUかMixポジションで使われることが多く、ネック単体をメインで使う人って少ないのでは?と思います。特に、結構歪ませるとネックだと音が潰れがちです。自分も、かつては出力が低くてブーミーになりやすいと思っていました。

 先に断っておきますと、自分のギターのネック側ザグリ(PUの底部分)にはゴム板が貼り付けられており、一般的なネジとバネで持ち上げるようなマウントではなく、ゴム板に押し付けるようなマウント形式です。また、板の厚さの都合で、PUが近い設定と(せざるをえない)なっています。

 さて、Ron Ellis Standard Plus JLの音出しをしてみて、まず高音域の煌びやかさに驚きました。キラッキラ。かなり立体感があって音抜けが良いです。エフェクターのゲインを弄ってみるとローパワーなPUであることは間違いないのですが、高音域が煌びやかな分だけパワーがあるような、反応速度が速いような感触があります。柔らかく弾くと甘いサウンドも出て、演奏者のニュアンスがゴリゴリ出ます。

 高音域が煌びやかだけどキンキンしていないバランスとなっています。高音域といってもプレゼンスの領域は控えめなのでしょう。ネックPUなので、構造上そこまで高音は出せないというのもあるでしょうか。先に書いた通り、PUが近いセットアップであり、こうなるとミッド&ローが前に出てきてブーミーになりがちですが、そういう感じもありません。ミッド少な目なのでしょうね。PUを近づけるとタッチレスポンスが良くなりますので、もし購入された方は近めの設定をお勧めしておきます。ブーミーになったりしませんよ。(ギターのポテンシャルによるかもしれないけど… ゴニョゴニョ)

 また、かなり低い低音域で厚みがあり、この低音のおかげでしょうか、立体感が豊かで、アコースティックな響きがよく出るようなバランスとなっています。各音に低音という陰影をうっすらと与えたような感覚。アコギや箱物にも通じる感触です。これがねぇ、とても不思議。謎エフェクトです。

 もともと搭載されていたネックPUがもっとローパワーでミッドに寄ったピックアップでしたので、それに対して一気に煌びやかになって少し戸惑いました(おそらく、多くのテレ用ネックPUに対してそのようになると思う)。最初に例示したNocturneの演奏もかなりミッドに寄っているサウンドですからなおさらです。ただ、この立体感や、弦のハリが音として出てくる感触は代えがたいものがありますし、それこそがジュリアン・サウンドの重要なポイントであるようにも思います。他にこういうのが出るPUがあったらマジで教えて欲しい。(どうせ同じぐらい高いんでしょうけど!!)

「ジュリアン・ラージ」サウンドを少し考察

 私は、このピックアップにJHS「Morning Glory」(ハイカットオン)を合わせるのが好きです。Morning Gloryの低音が残る感触と、歪みはじめが明確でコントローラブルである点、ハイカットオンでマイルドになる点などがマッチしていると感じます。このピックアップでなくても、テレキャスターなら合うと思いますよ。2024年現在のジュリアン・ラージはMorning Gloryを使っていないのですが、お手軽にジュリアンごっこをするには適していると思います。

 Nocturneでは、フルアコをテレキャスターに置き換えたような音作りをしているのでは?と予想します。アンプはミッドがたっぷり出るツイード期のChampのようですが、それにしたって丸いサウンドです。おそらく、意図的にフルアコっぽいサウンドを狙っているのでは?と思います。そこから、テレキャスそのものの良さを引き出す方向に舵を切るのか、かなりストレートで、すっきりとしたサウンドを多用するようになっています。

 Ron Ellis Standard Plus JLは、楽器本来の音を出してくれるようで、弦へのタッチや響きがよく出てくれます。そのためか、音が違ってもおかしくないEllisonic P90を使った↑の動画に近いニュアンスが出てくれるように思います。ベース音として6弦をポーンと叩いた時の立体感が自分のギターでも得られ、これは他のギターでは得られなかったものでした。このように、Ron Ellisや、それを使うジュリアン・ラージの世界観を感じるには十分なアイテムではないか?と考えています。

Ron Ellis Standard Plus JLの抵抗値

 ここで参考までに実測の抵抗値を紹介しておきましょう。抵抗値が同じでもサウンドは同じにならないし、正確な測定も私の環境ではできないため本当に参考にしかならないので、そのつもりで…。

Ron Ellis Standard Plus JL:5.65kΩ

 結構抵抗値が低いですね。測定して驚きました。(測定時の接触抵抗などを考慮すると高く出がちなので、余計に低いと感じた。)参考までに…。なお、サウンド傾向からアルニコ5ではないか?と予想します。これらを考えつつ、定番っぽいピックアップを並べてみます。

Ron Ellis Std Pls JL5.65kΩ非公表
ダンカン STR-17.6kΩアルニコ5
ディマジオ DP172/DP1776.22/6.64kΩ共にアルニコ5
フェンダー
Custom Shop ’51 Nocaster
7.1kΩアルニコ3
Lollar Vintaege T5.6kΩ非公表
Lindy Fralin
Vintage Hot Tele
7.4kΩアルニコ5

 このように、LollarのVintage Tがすごく近いですね。ただ、説明書きを読む限り、ミッドを前に押し出したようなサウンドで、ロン・エリスのJLモデルとは違う方向に見えます…。Lollar Vintage Tは抵抗値と公式説明によるサウンドのバランスから推察するに、アルニコ3か、もしかしたらアルニコ2かもしれませんね。

Ron Ellis Standard Plus JLは良いものだけど高価!!

 さて、そろそろまとめます。ここまで書いたように、タッチレスポンスに敏感で、立体感のあるサウンドが非常に良いです。ものすごく気に入っています。似たような雰囲気の出るPUをご存じでしたら教えて欲しいですね(そのメーカーのPUを別のギターで試したい)

 しかしまぁ、いかんせん高価です。PU一発に7万円ですよ。まぁ…ジュリアン・ラージはギターとアンプだけみたいな音作りですから、「〇〇さんのサウンドを出すには5万円するTS系と5万円するディストーションと…」ということを考えれば、許せる範囲なのかなぁと思います(そう言い聞かせて買いました)

コメント

Verified by MonsterInsights
タイトルとURLをコピーしました