国産最高峰とも呼ばれるShinosによる、「手の届きやすい価格で」「自宅からライブまで使用できる」「良質なアンプ」をテーマとして開発されたRocket。安くはないですが、しっかりと練り上げられていて、価格分だけの価値のあるアンプです。特徴である0.3Wまで出力を下げられるアッテネータの性能を中心に試奏した感想を述べます。
「試奏の感想」のカテゴリーでは、楽器店や友人所有の機材を試奏させてもらった感想を述べます。楽器店で試奏させてもらったけど購入しなかった理由は、”在庫が無くて買えなかった”、”ほかにも候補があって悩み中”、”予算が足りなくて断念した”、”値段が高くて購入を検討中”、”好みに合わなくて購入しなかった”などとなります。
自分は購入しなかった(できなかった)ですが、この記事を読んだ方が「自分には合いそう!」などと参考にしていただくためにまとめています。
Shinos Rocketのスペックや特徴
Shinos Rocketは、多くのミュージシャンに愛用されるアンプを製作するShinosによる「手の届きやすい価格で」「自宅からライブまで使用できる」「良質なアンプ」をテーマとする小型モデルです。
ECC83(12AX7)×3、6L6×2もしくはEL34×2の構成で、本格的なスプリングリバーブとトレモロを搭載しています。さらに、30W、3W、0.3Wに調整可能なアッテネータ(負荷切換型)を搭載しています。もうひとつ特徴は、出力管を差し替え+モード切替スイッチによって変更可能という点です。理論上可能なのは理解しているものの、量産機によく載せたなぁと思います。2024年末時点で30万円をちょっと超えるぐらいの価格となっています。
この値段をどう考えるか?は結構難しいところです。出力調整機能を搭載するモデルはかなり増えてきましたが、1W以下、0.3Wまで下げられるモデルは少ないです。また、リバーブはデジタルリバーブというモデルも多く、せっかく高いお金を出して真空管アンプを買うのだから…という気持ちも理解できます(というか自分がそう) そうなってくると製造コストは上がってニッチになって売れなくて…となり、値段が上がってしまうのは仕方がない。よって、30万円という値段は「高く感じてしまうけど、すげー頑張った値段で提供してくれている」と思っています。
Shinos Rocketが欲しくなった理由や試奏した理由
前々から気になっていて、2年前ぐらいかな? 一度試奏したことがありました。その時は、愛用のODまで持ち込んで「良いなぁ」と思ってはいたものの、直後に大きい買い物をしたため断念しました。ここ1年ぐらいで多少はギターを弾けるようになり、またクリーンの楽しみ方も、良いクリーンも分かってきて、そろそろ考えても良いのではないか?と考えました。ファズも好きになったので、ファズへの反応性の良い真空管アンプが気になってきたというのもあります。
Shinos Rocket(6L6モデル)を試奏した感想
最初に前提条件として、私はShinos Rocketを外に持ち出すつもりはほとんどなく(年に数回、スタジオに持っていくかもね、ぐらい)、基本は自宅で小音量使用を想定しています。
さて、感想を短くまとめてしまうと「クリーン重視の人向け。歪みはエフェクターで、アンプの歪みは最後の旨味付けぐらいと考えると良いサウンドで楽しめる。」といった印象でした。悪い印象というか、購入の決断に至れなかった理由を書いてしまうと「歪みの質が、ちょっとぼそぼそっとした感じで、キレと勢いのある歪みというわけでも、ヴィンテージっぽい”いなたい”感じでもなかった」という点でした。この感想は、6L6モデルのもので、EL34だと歪みの質もそこそこ変わったかもしれません。
さすがに真空管アンプだけあってボリュームへの追従性が良く、ボリュームに追従するODを前段に置いて軽く歪ませつつプッシュするだけで気持ちの良いオーバードライブサウンドが飛び出てきますし、ギターのボリュームを絞るとスッと収まってくれます。アンプでの歪み量は稼げないので、激しく歪ませたい場合はエフェクターで積極的に音を作るのが良いかと。
クリーンについては、Shinos Rocketの特徴でもあるアッテネータの感想と合わせて次項で述べましょう。
Shinos Rocketのアッテネータの効果や音質は?
電源ONをして30Wで真空管が温まる程度に弾いてから、0.3Wに切り替えてクリーンで弾きました。感想は「かなり頑張っていると思うけど、割とスカスカして、煌めきもそれなりに失われた感じがある」というものでした。Rocketの名誉のために書いておきますが、そもそも大出力用のスピーカーを小音量で鳴らすとスピーカーの設計よりも入力が小さくなって性能が出なくなり、そもそも音質が全く同じであっても耳での感じ方が変わってしまうため、どうやったって不利です。また、他のアッテネータ搭載モデルでは、もうちょっとショボくなることも経験したことがあるのでRocketは悪くないと思っています。(が、全く変わらない!とは言えないと思います)
色々と設定を弄りながら出力を切り替えつつ試しました。やはり、30Wが一番音が良いです。そうこうしていると、試奏場所の近くに置いてあった商品について聞きたいと他のお客さんがやってきて店員さんと会話を始めたため、3Wあるいは30Wモードで、その人々の会話が聞こえる程度(あるいは、その人たちが普通の音量で会話してもらえる程度)にして試奏してみました。すると、アンプのボリューム調整はコントローラブルで(ちょいと触ったら爆音みたいなことがない)、30Wモードでも楽しめましたし、3Wなら余裕です。これなら、自宅でも0.3Wまで下げずに、3Wでボリュームを抑えた方が良いと感じました。
持って行った29 Pedals JFETに惑わされた
というわけで、悪くないが購入を決断する決め手がなぁと(30万円ですからねぇ…)思いつつ、持って行っていた29 PedalsのJFETを接続してONしてみました。レビューは↓にあります。
するとなんということでしょう。サウンドに深みや奥行きが付与され、きらめきのスパイスが追加されました。めちゃくちゃ良い。そして、OFFすると、なんだか物足りなくなってしまいました…。
この時自分は「家で使っているJC-22のサウンドもそこそこ良くて、JFETでぐっと良くなっているから、無理に買わなくても良いのではないか? あるいは、もう少し作戦を練り直しても良いのではないか?」と考えました。逆に考えて「家でこのサウンドが出るなら買い!」と考えても良かったのですが、なぜだかそのタイミングでは買わない方に傾いたんですよね。
最後に
基本的には「30Wと十分な出力が有って、小規模ライブ(+PAで大規模ライブ)などに使うアンプを家でも使える」という設計なのだと思います。店員さんとも会話したのですが、小音量とかヘッドホンで楽しむだけの人は、近年はモデリング系に移行しており、こういった小音量対応の真空管アンプ(しかもクリーンが良いアンプ)というのは、選択肢がかなり少ない現状です。よって、Shinos Rocketは価値がある。繰り返しになりますが、アッテネータに過剰な期待はしない方が良いです。
自分の要求が「物理的にちょっと無理がある」というのも感じはじめ、いったん保留としました。出力管を変更可能な部分を削除してコストダウンを…という意見もあるかもしれませんが、少量生産でラインナップを増やす方が高コストになるでしょうし、出力管の音の違いを求めるような面倒くさい変人(自分のこと)こそ、Shinos Rocketに興味を持つと思うので、これはこれで良いと思います。
コメント