評価の高いBOSSのマルチエフェクターのGT-1000 CORE(フラッグシップGT-1000のコンパクト版)を使ってきたのですが、急速に人気を高めているTONEXが放つ超コンパクトアンプシミュレーターのTONEX ONEを購入したので比較レビューをします。私は、「ギターアンプ」という基本の味を作ることを目的に使っており、主にヘッドホンでの使用を想定しています。それぞれに良い点がありつつ、クリーンの質感がTONEX Oneの方が好みだと感じています。TONEX One良いですよ。

「モデリング系」と「キャプチャー系」は似ているようで全然違う
モデリング系もキャプチャー系もいずれもデジタル系機材であり(一部、フェンダーアンプの回路をエフェクターに再現!とかもあって、それもモデリング系と言えなくもないけど、それは今回は除外)、中にプロセッサー(小さいコンピューターと考えましょう)が搭載されていて、そこでギターの入力に応じて音を変化させるものです。モデリング系とキャプチャー系は出てくる音はTSやマーシャルの音であっても、その音を作るまでの過程が全く違います。正式な呼び分けが不明だったので、以下では、この記事の中での呼び分けを記載しておきましょう。
この記事での「モデリング系」とは?
モデリング系は古くからある形式で、例えばTSならこういう回路なので、ここでこう歪むとかを内部の計算で波形を作り、音として再現するものです。BOSSのGT-1000やLine 6 HELIXが代表例です。古くからあるので、デジタルのマルチエフェクターと言えばこの形式でした。各モデルはメーカーの開発者がプログラミングして作り出しています。
この記事での「キャプチャー系」とは?
モデリング系よりも新しい形式となります。KemperやQuad Coretexが代表例でしたが、近年ではTonexが人気を高めています。
キャプチャー系や名のごとく、実際のアンプのサウンドをキャプチャー(取り込む)して、それを再現するものとなります。実際のアンプ(エフェクター)にある入力を突っ込んで、その時の音の変化を読み取り、その特性を(学術的な意味での)モデルに置き換えます。使用する際には、ギター入力をそのモデルに入れて、そのモデルの挙動によって音を変化させます。
まとめると、モデリング系はメーカーの技術者がプログラミングして作る必要があるため、メーカーがアップデートとして追加してくれないとモデルが増えません。一方、キャプチャー系は機材さえそろえればシステムにお任せな感じでキャプチャーできるようで、ユーザーもメーカーも比較的簡単にモデルが追加でき、アーティスト使用の実機のキャプチャーなども提供されています。
BOSS GT-1000 COREを持っているのにTONEX Oneを購入した理由
この記事での前提は、これら機材にヘッドフォンを挿して、お手軽練習キットにする目的で購入したという点です。実際のアンプと組み合わせて使用する場合には、この記事でのレビューと異なる印象となる可能性が非常に高いです。また、特にGT-1000 Coreは音作りの幅が広いため、使いこなせているとは思いません。上手い人ならもっと良くなるかも…と思っています。
さて、GT-1000 Coreを買ってみて、いきなり大満足!とはいきませんでした。Tonex Oneは自分の用途にマッチしているように感じています。大まかに良いと思った点と好みではない点を記載します。
ただし、今回はモデリング系とキャプチャー系の違いを述べるので、TONEX Oneの操作系が少ないといったハード面は除外しています。
BOSS GT-1000 Coreの良いと思った点
・エフェクターが多彩
・エフェクターやアンプの組み合わせが自由
・ハイゲイン系、エクストリームなハイゲイン系はまじで良い
・複数の同系列のエフェクターを並べられる
・各エフェクターやアンプを足元で自由度高く切り替え可能
・切り替えだけでなくてON-OFF可能
・本体だけで各種調整が幅広く可能
・モジュレーション系の表現が上手い
・ベースとの相性も良い
BOSS GT-1000 Coreの好みではない点
・クリーンや僅かに歪んだようなサウンドが苦手のような?
・歪みの質感がちょっとノッペリ
・歪みの質はじめの部分が、なんかバサバサしてませんか?
・ピッキングやギターボリュームの反応はそこまで良くない
・複数の歪み系を重ねた時の反応が微妙
・各モデルを上手く組み合わせるにも調整項目が多くて調整幅が広くて難しい
・公式で追加されない限り新しいモデルを追加できない
TONEX Oneの良いと思った点
・PC上で良いと思ったモデルを取り込めば、そのままの音が出る
・ユーザーがどんどんモデルを追加してくれる
・ダウンロード可能なモデルが非常に豊富
・クリーンが良い すごく満足
・歪みの質感が(個人的に)自然な感じに思う
・ギターボリュームへの反応もそこそこ
・歪み始めの領域も結構得意
Tonex Oneの好みではない点
・好みのモデルが無いと音を作り込めない
・好みのエフェクトと好みのアンプを2つ選んで組み合わせるようなことができない
・クランチのマーシャルの前にTSを置いてTSをオンオフするような使い方ができない
(TSオンのモデルとオフのモデルを用意すれば良いけど)
・各種設定はギターやヘッドホンの調整用であり、大幅に変えると変になりやすい
・モデルはたくさんアップロードされているが、クリーンとハイゲインに偏っているような
・モデルが多すぎて、大人気モデルから選ぶだけになりがちで、深掘りして探しづらい
・空間系は別に用意する必要がある
・全般的にすごく低音が強いバランスじゃない?
・自分でモデルを追加するにはキャプチャー環境が必要
比べてみると
GT-1000 Coreの良いところが多いですね。これはGT-1000 Coreの方ができることが多いということに繋がっています。良いと思った点が多いGT-1000 Coreの方が好みのようにも見えますが、そういうわけでもありません。
TONEX Oneの方が私は使いやすく、好みの音が出ると思っています。理由としては、クリーンの質感や歪みの質感、歪み始めの領域の良さがあって、好みのモデルを見つけたらポンと好きな音が出る点が良いです。特にクリーンが良いです。GT-1000 Coreでは太さがあって旨味のあるクリーンの質感が出なかったのですが、TONEX Oneでは立体感のあるクリーンがポーンと出てびっくりしました。
GT-1000 Coreのアンプモデルの扱い方は結構難しいのでは?というのが個人的な見解で、最も強力な使い方を考えてみました。
・最前段は好みのオーバードライブなんかを置く
・GT-1000 Coreはアンプ+キャビモデルをオフ
・GT-1000 Coreはコーラスやリバーブといった空間系を配置
・GT-1000 Coreの後段やセンドリターンにTONEX One
・TONEX Oneにはアンプ+キャビモデル
・TONEX Oneのリバーブなどはオフ
最後に、ハード面はどう?
ハード面の仕上がりはBOSSってやっぱりすごいですよ。GT-1000 COREはクリック感のあるノブや、分かりやすいボタン、フットスイッチもそろっていて使いやすいです。
TONEX Oneはコンセプトとして最もコンパクトなモデルのため、操作系が少なすぎるという点はどうしても気になります。また、コンパクト化・低コスト化するために3つのボリュームもクリック感が無いのに10モードぐらいの切り替えに充てられていたりして「あれ?変わらないなぁ…いやいや行き過ぎ」みたいなことがあります。これだけ少ない操作系でいろいろできるようにしていることを考えると、よくやっているなぁとは思っています。