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私の主力ODであるEastern Music Device「PD-1」のレビュー

フーチーズ専売であるEastern Music Device(以下EMD)「PD-1」を購入しました。マイルドでありながらゲインを上げると鋭さが出てきます。また、歪み始めからスムースに変化し始めること、ピッキングニュアンスやボリュームコントロールに素直に反応してくれます。私のメインオーバードライブとして、1台だけ持ち出すならこれだと感じています。

EMD PD-1について

 EMDは(少なくとも)2013年以前から生産を続けている日本のペダルブランドです。EMD PD-1は2020年頃から発売されているモデルで、フーチーズと共同で音のチューニングをしたということでフーチーズ専売モデルとなっています。現状で、EMDはフーチーズ以外に静岡のテイラーズギターでTG-1が販売されている以外は取り扱いが無いようです。

 PD-1はクラシカルなオーバードライブの回路を踏襲していると公式に述べられています。また、Smoky Signal Audio チューブレスからインスピレーションを得たモデルとの噂です。チューブレスは超高額になってしまって個体数も少なく、試すこともできないので傾向は分からないのですが、その他と比べた時にPD-1は、サウンドに特別な特徴があるわけではないのですが、深く考察してみると他には替えが効きにくいというモデルになっています。

 また、PD-1はシングルコイルを想定したモデル、PD-2というモデルも存在してそちらはハムバッカーを想定しているとのこと。ただ、PD-1とハムバッカーの組み合わせも超お気に入りです。

 所有している、そしてレビューするのは初期モデルで、使用している部品が廃番になったということでバージョンアップし、2024年末時点でV2としてリニューアルされています。V2は本機(V1としましょう)のサウンドを継承しつつ、低音が少し出るように調整され、特徴的なADDノブが筐体前面に移動されました。

EMD PD-1のサウンドレビュー

  PD-1のコントロールは3つ。ボリューム、ゲイン、トーン、そしてADDです。ぱっと見は3ノブですが、ADDは筐体上面に配置されています。ADDがPD-1の特徴を決定づけるものですが、この話を最初に持ってくるとレビューが難しいので、最初にADDを適当なポジションに置いて、ボリューム、ゲイン、トーンを変化させた際のレビューを行いましょう。

 それぞれのコントロールは非常に素直で、一般的なコントロールと同等です。トーンを絞ると高音域を削ってゆき、ぐっと上げてゆくと高音域が目立ってきます。かなり高いところから徐々にカットオフ周波数が下がってくる感じですので、おそらくパッシブタイプでしょう。

 比較的ローゲインなクラシカルなPUと組み合わせると、ゲインノブ10時ぐらいまでは滲むようなスムースな歪み、そこから2時、3時を過ぎたあたりから鋭さを含んだ歪みに変化し始めます。全体的にはもたつくような低音が整理されてすっきりとしつつ、深みや旨味に繋がるような低音は残ってくれます。そのため、低音をカットしているというよりも「不要な低音を抑えている」感触に近いです。トーンを12~2時ぐらいまでにすると高音域も落ち着いており、相対的に中音域が残る、いわゆるオーバードライブのサウンドバランスとなります。

 PD-1の大きな特徴は、このゲインの操作感や歪みの質感で、歪み始めとクリーンの境目がスムースで、ゲインを上げた分だけ歪み感がキレイに増していく感触が得られます。そして弱く弾くとクリーンなサウンドと、ニュアンスが素直に表現できます。さらに、ゲインを高めに設定してギターボリュームを絞ると、スッと歪み感が収まり、音量は残しつつゲインが下がる感触があります。

 この際、低音が抑えられていることや高音域の絶妙な味付けによって「枯れた」ような質感となります。これはPD-1のゲインを抑えた時とは少し異なる感触で、個人的にゲインを高め(2時ぐらい)にしてギターボリュームを絞って滲むような歪みを含んだクリーンを出すのが好みです。

 この他の好みの設定としては、トーン2時ぐらい、ゲイン3時ぐらい、レスポールのブリッジPUでのドライブサウンドがめちゃくちゃ気持ち良いです。

キーとなるADDコントロール

 このようなサウンドバランスであることを分かってもらったうえで、ADDの話に移りましょう。このADDの感触は結構難しい。ADDを時計回りに回すと鋭く、キレのある高音が立ってきます。これだけ聞くとトーンとの違いが分かりにくいのですが……。

 ADDは歪みの質に大きく影響し、ADDを絞ってトーンを上げると鋭さが抑えられつつ粗さもあるグォーという歪みの質になります。ゲインを絞り気味にするとプレーン弦のパリンとした成分を残しながら、歪み自体はマイルドに…となります。ADDを全開にするとギラギラジャリジャリとした成分が立ってきます。トーンを上げると相当に鋭い。トーンを絞ると全体に丸まりつつ(プレーン弦もポーンという音になりつつ)歪み始めると鋭いサウンドとなります。

 ADDを時計回り全開、ゲインを12時以上ぐらいでクランチ、トーンも12時以上にして高音域がジャリっとでるギター(ピックアップ)と組み合わせると、耳に痛いほどの鋭い高音が出ます。全体的にマイルドと解説してきましたが、実はかなり高音域も鋭く、反応性高く出ていることが分かります。

 では、どのように音を作ってゆくか。自分は「PD-1が基本の音を作る役割」であることを前提に解説します。PD-1オフ(他もオフ)状態でアンプのセッティングを行って、自分の思うニュートラルなサウンドに合せます。ジャジーでもったりとしたサウンドにしたくても基本はアンプをニュートラルに。

 次に、PD-1のトーンを12時、ドライブ10時ぐらい、ボリュームを適当に小さめに設定してオンにします。そして、出したい音をイメージしつつADDを調整します。明るく、キレのあるドライブサウンドならADDを右回転、柔らかくスムースで暖かいサウンドならば左回転します。アンプによって特性が違うため、思ったよりも鋭いサウンドが出たらADDを左回転して調整します。ちなみに、自分は真ん中よりも左にすることは稀かな?と思っています。これである程度の方向性を定めたら、ゲインとトーン、そしてボリュームを調整します。

秘儀「PD-1 二段重ね」

 PD-1の前段にODを置いて軽くプッシュしても、なかなか良いサウンドが出てくれますし、PD-1で何かをプッシュしても良いサウンドになります。そうならば、PD-1でPD-1をプッシュしたら…。そう思うのは自然ですよね?ですよね?

 ということで、あまりにもPD-1が気に入ってしまい、バックアップも兼ねて2つ目のPD-1も買ってしまいました。前代未聞のPD-1でPD-1をプッシュします。

右の個体のノブがデフォルトです。左は交換というか、トーンについていたものをADDへ変更して、3つを揃えました。

 これがまた驚きで、ADDを両方ともに全開に近づけるとギラギラとした鋭く、反応性の良いサウンドです。それぞれを適度に抑えながらゲインをそれぞれ1時ぐらいに設定すると、ODを2台重ねただけとは思えないほどのダイナミクスがありながらディストーションの領域に入ってきます。しかもボリュームを絞るとクランチにスッと落ちる。いやぁこれはすげぇ…。

最後に

 PD-1は、大幅に音を変化させるような強さは無いにもかかわらず、どんな機材と組み合わせても「そうそう、これこれ」という安心感のあるサウンドを出してくれます。また、ギター、アンプそれぞれの特性を残しながら「これこれ」感を与えてくれる点が面白く、そして特別であるように感じます。

 試すことが難しいモデルではありますが、ぜひ一度手に取って欲しいモデルです。

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