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1997年製のFender American Vintage 62 Stratocasterのレストア

いろいろあって友人のギターをレストアすることになりました。最初に受け取って診てみると、ネックの仕込みや反り、ブリッジの設定がどうにも変で、状態は悪いものでした。そのあたりの是正をしながら、低予算でサウンドの向上を狙ったレストアを施しました。

レストアするに至った経緯

 友人(Aさん)の昔の音楽友達(Bさん)が結婚することになり、その結婚式でAさんとBさんがサプライズ?で演奏?弾き語り?することになったそうで。Bさんはギターから遠ざかっていてギターも手元に無く、Aさんが貸して演奏することになりました。

 そこで、Aさんは使っていないFender「American Vintage Stratocaster」を使おうとケースを開けてみると、いつだかに使ったままで汚れはすごいし弦高なども変で、とてもじゃないが使えそうにない! というわけで私に相談を持ち掛けたのでした。

 私とBさんはAさんを通じて数回お会いしたことがあり、その際に良くしていただいたので、私からのご祝儀を兼ねてレストアすることにいたしました。

1997年製 Fender American Vintage 62 Stratocaster

 と、モデル名をはっきり書いちゃっていますが、あまり自信がありません。分解により後に分かりますが、1997年3月20日にネックが仕上げられたので1997年製であることは間違いないでしょう。そのほかの使用を見てもアメヴィンだと考えています。詳しく見るほど2000年代のアメヴィンとちょっと違う。

 詳しい別の友人によると、12フレットのポジションマーク(インレイ)の間隔が狭く、指板サイドのポジションマークもダークな色合い?で、古い仕様ということでした。ノブなども変わってるかも?とのこと。

現状把握とレストアの方向性の決定

とりあえず弾ける状態にもってゆきます。レストアの方向性は以下のように定めました。

・ネックの反りや弦高の異常を修正
・併せてフレットすり合わせなど実施
・POTのガリが酷く電装系の交換(PUは交換せず)
・サウンドが硬いのでブリッジコマとスプリングを交換
(低予算で効果が高いと予想)
・欠損していたアームを購入

ネック+フレット周りの修正

ネックを取り外してびっくりしたのが(おそらく後入れで)シムが入れられており、そのせいでレスポールのようなネック角がついていました。そのため、ブリッジは妙に高く、でも全域で変なビビリが出ています。

画像のシムは私が試行錯誤の際に入れたもので、最終的には取り外しています。

 シムを取り外して調整をしてみますが変な取り付け角の状態でつかったりメンテしたせいかフレットのバランスが悪く、すり合わせを行いました。併せて指板のクリーニングも。

クリーニング後。すり合わせ後は最後に。

ブリッジ周りの部品交換

 使用したのはコマ、スプリングともにRawVintage。定番です。コマのイモネジは短いものに交換しています。弾くだけなら不要な部品交換でしたが、このあたりは私からのご祝儀ということで。自分の音の変化の確認の実験という意味合いもありました。

電装系の部品交換

 ピックガードを外してみると状態があまりよくない。配線が汚いですね…。

あとこれ、本当に純正なのかしら?ちょと良く分かりません。

 ついでと言ってはなんですが、ブリッジピックアップがキンキンして使いにくいとのAさんのコメントを受けて「リアトーン化」の改造も施します。

・マスターVol
・フロント/センタートーン
・リアトーン

となります。リアトーンは、リアらしいギャリギャリ感を残したかったため、0.022μFのオイルコンデンサ―と300kΩのPOTを使用し、ハムバッカー風というかP90風ですね、そういう数値にしています。

音が出ること、Vol、トーンが効くことを確認してピックガードを元に戻します。併せてアウトプットジャックも交換しています。配線は、オヤイデの銀単線を使用しています。音が出力される側の配線は銀単線、捨てる側(トーンへ落ちる側)は純正の配線を流用します。

 ピックアップ高さを調整するゴムが劣化して高さ調整が効きにくくなっていたため交換します。同様のゴムがあればよかったのですが何故かええ感じのものが無かったのでバネに交換します。

レストアに際して苦労したこと

 ネックの調整の経験が浅く、ネックを外して…という経験も少なかったため、最初は調整足りず→調整しすぎ…と苦労しました。電装系はPOT交換だったのでエイっ!と配線を外してやればよい(POTを綺麗に残す必要が無い)ため、難易度は低かったです。ストラトはピックガードがごっそり外れるので作業もやりやすかった。

 コマも取り外し、スプリングの調整もゼロからだったため、このあたりも行ったり来たり、ネックの反りとの関係も関わってきて…と複合的です。

 ネック周りを修正しただけでは上手く鳴らず、9Fあたりを弾いた際の19F以降あたりでのビビリがひどかったです。これはおそらく、ネックが軽く波打っており、フレットのすり合わせもされていなかったためだと予想してすり合わせをしました。全体の調子を合わせながらすり合わせするのが難しかったですね。最終的に19F以降あたりを少し多めに削ってバランスを取りました。(Aさんの承諾を得ました)

最後に

 不思議なもので、仕上がってくると急に良くなってくる(よく鳴ってくる)ポイントがあります。最終的に、スプリングとコマ交換も効いたのか、バネのリバーブ感がありつつ、ボディーもよく鳴って、シャリンと軽やかさも出ています。これは結構レベル高い仕上がりでは?

 ただ、PUの特性でしょうか、アンプからの出音は(余計な)硬さや鋭さがあり、「元気なヴィンテージトーン」で言われる鋭さではなくて、味気ない芯のような雰囲気が残ります。

 何より、30年近く経過した個体であり、その雰囲気が良く、なんとかして第一線に戻したいと思っていたため、今回の仕上がりは満足がゆくものとなりました。

 このギターを受け取ったのが5月で、行ったり来たりで試行錯誤しながら完成したのが8月の連休中で、3カ月ぐらい楽しめました。こう上手くいくと(完全に自画自賛ですが)、それなりの状態のギターを買ってレストアする趣味を始めたくなります。

後日追記

 この後にAさんに納品して本番に使用されたそうです。写真は出せませんが、自分がメンテしたギターが晴れ舞台のキーアイテムになっていると考えると嬉しいですね。

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