私のSAITO S-622CSのブリッジには、ゴトー510Tの亜鉛製イナーシャブロックが取り付けられています。これをゴトー510TSの鉄製(スチール製)ブロックに交換しました。交換したところ、ルーズだった低音がしっかりと出て、引き締まった低音が出るようになりました。また、ミッドからハイにかけても芯のあるサウンドになり、全体的にゲインが上がったような印象となり、さらにモダンな仕上がりになりました。ヴィンテージストラトは鉄製ブロックなのですが、鉄製に交換したら必ずしもヴィンテージ風になるとは限らないということが分かりました。

イナーシャブロックを替えようと考えたきっかけ
様々な部品を交換してみて、その効果を実感し、各部品の影響度合いを体感してみたかったから。部品交換によるアップグレードとして定番の鉄製イナーシャブロックの効果を体感して見たかったから。Suhr化しつつあるサイト― S-622CSとSuhrの部品(金物)の差がブロックぐらいになってきたから、いっそのことと考えたから。
イナーシャブロックを交換をしたギターの現状のおさらい
交換対象のギターはSAITO S-622CS
交換するのはSAITO S-622CSです。かなり手が入っているので状態をまとめます。
・ペグ 純正(GOTOH SD91)+C.A.R.D
・トレモロユニット 純正(GOTOH 510T=亜鉛合金ブロック)
→コマをスチールブロックタイプへ、イモネジを先丸タイプへ
・トレモロスプリング ESP Type 1
・PU Suhr V63+ & SSH
・POT Vol POT 500kΩ(シングル選択時は250k)

現在の状態で、分離や反応が良く、モダンでバランスの良いサウンドです。アンプラグドの音は、購入当初よりかなりバランスが良くなりましたが、それでもローが軽く、ミッドがボワンと出るようなバランスでした。アンプからの出音が良いので問題ないものの、この「ミッドがボワン」を解消すれば、もうひと段階良くなるのでは?と思ったりもしていました。
亜鉛合金(Zinc)製イナーシャブロックから鉄製イナーシャブロックへ
トレモロのイナーシャブロックと呼ばれるブリッジに取りついているブロックは、ヴィンテージが鉄製であったこともあり「ヴィンテージ系を狙うなら鉄製」というのが一般的です。
亜鉛合金製の方が安価に製造できるため、安価なギターはだいたい亜鉛合金製イナーシャブロックです。ただ、今回のS-622CSが使用しているゴトー 510Tのブロックは「安物」ではなく、弦を保持するポイントを調整することでチューニングの狂いを減らすような工夫が凝らされた高級品です。
鉄製は「ゴリっ」と低音と高音域が出て芯のあるサウンドと言われており、亜鉛合金はミッドに寄ってローは少なめ、一部の倍音が多くて暖かみがあるのか雑味があるのか…というのが一般的な評判となります。こういう特性を理解して、安いから亜鉛製というのではなくて、狙ったサウンドを出すため、あるいはチューニング安定性を狙って510Tを採用しているということは十分にありえると思っています。
鉄製イナーシャブロックをどのようにして入手するか?
フェンダー製のブリッジであれば、オプションパーツとして鉄製ブロックが販売されていたりしますが、ゴトー510T用(510TS相当)のブロックは単品販売されていません。ということで、ブロック一式を買うしかなくなりました…。ゴトーのフラッグシップ製品だけあって、高いっす…。
鉄製イナーシャブロックを取り付けてゆく
というわけで、ブリッジを取り外し、付け替えます。今回はトレモロユニット一式を買っているので、ブリッジプレート+イナーシャブロックのユニットを取り替えます。510T(S)は2点支持タイプで、スプリングを外すと「ガボッ」とユニットが外れてくれます。



手前が鉄製ブロックの510TS。削り行程が入っていることが分かります。ほぼ真四角ですし、削り出しで作っているのでしょうかね? 本編とは関係ありませんが、2点支持の支柱との接触部のエッジが立っており、作動精度が高そうな見た目です。さすが、世界のゴトーのフラッグシップユニット。

購入したのはブラスブロックの商品。ブラスブロックに替えたかったのではなく、どうせなら今使っている部品を流用して、ブラスブロックは今後の検証のためにストックしておこうと考えたため。今回の入手により、510ブリッジの、プレスタイプ、ブロックタイプ、ブラスブロックタイプの3種類が揃いました。

あっけなく交換が完了しました。音比較のために弦を流用しようと考えましたが、ブリッジでの固定位置の違いにより、弦の長さが違って使えませんでした。元の弦も2週間ほどしか使っていないものだったので、比較対象としては悪くないと思います。
交換してみて、最初の感想
弦を張ってチューニングをするわけですが、その時のボディーの響きからして変わりました。かなり大きな変化です。で、ギターを構えようとしたら、意外と重くなっていて驚きました。亜鉛ブロック+プレートが236g、鉄ブロック+プレートが322gと、たった100g弱増えただけなのですが、私のS-622CSが3.5kgぐらいだったので、軽量級から普通(3.6kgぐらい)になった印象となったようです。(ボディーの端の部分で重量増加したのも、モーメント的に効いていると思う)
弾いてみますと、顕著な差は5~6弦ですね。自分のS-622CSが低音がルーズで「ぽーん」という鳴り方をしていましたが「ボーン」と巻弦らしい響きを伴いつつ、音量も大きく、ボディーの揺れも大きく鳴るようになりました。
コードを弾くと、それまではボディーの中心部分で鳴って「バーン」と音の塊になっていたところ、鉄製ブロックに交換したことで「ジャラーン」と分離感が出てきました。1つ1つの弦の張りとか、芯があるように感じます。
これまでの状態も、かなりの改善によって「良い状態」になっていたのですが、ボディーの鳴り方としては、より鳴りやすく、良好なものになっているのではないか?と思います。
鉄製ブロックによる音の変化
サウンド全体の押し出しが強く、はっきりとしました。先に書いた生音の変化がアンプからの出音にもそのまま当てはまる印象です。一番の違いは、ハードロックやメタルでザクザク刻む時の厚みや締りが出た点で、私のギターの弱点でもあった(改善したかった)部分が好みに近づいたため満足感があります。
元々出ていたミッドからハイにかけての音が残りつつ、出にくかった音域が持ち上がったため、出力が上がったような感想があります。サスティーンも伸び、分離感もあります。タッチへの反応の良さにも磨きがかかったように思います。
絶対に鉄製(スチール製)が良いか?と問われると、そうとも言い切れない
ここまで鉄製ブロックを褒めてきましたが、鉄製の方が優れているか?と問われると、そうとも言い切れません。
サウンドは確かに変化しました。その差は大きいとも言えますし、それほどでもないとも言えます。全体の割合から考えて、10%未満といったところでしょう。弦のゲージや銘柄のほうが影響が大きそうですし、ブリッジのこまの影響の方が大きいように思います。ただ、低音の締りや押し出し、全体の音の芯がはっきりする点は、他の部品では実現しにくいところがあり、その観点では鉄製ブロックを交換する動機になりそうです。個人的には、ハードロックやメタルでザクザク刻む時の厚みや締りが出たので、満足感があります。
一方で、そこまで低音の質感を求めないとか、元々重いギターやアッシュ、マホ+メイプル製ボディーのような、しっかりと低音の出るギターでは、音が硬くなりすぎる要因になるかもしれません。また、亜鉛ブロックのミッドやハイにある柔らかさや、雑味を含んだ雰囲気が好みの人もいるでしょう(それなりにいそう)。
ヴィンテージは鉄製ブロックで、鉄製に替えればヴィンテージ風になるかと問われれば、今回の場合は「当てはまるとは言えない」状態です。全域が出るようになって、さらにモダンになったとも言えます。
ですので、鉄製ブロックへの交換が「必ずしも、良い音になるとは限らない」ということは言っておきたいと思います。



