友人からCrazy Tube Circuitsの「Venus」を借りることが出来ましたのでレビューします。Venusは、エリック・ジョンソンやデヴィッド・ギルモアらの使用で知られる名機「BK Butler Tube Driver」にインスパイアされた、真空管搭載オーバードライブペダルです。オリジナルではAC電源が必要で大型筐体であったところ、VenusではDC9Vでよく、小型化も実現しています。

Crazy Tube Circuits「Venus」について
Crazy Tube Circuitsは、ギリシャを拠点とするエフェクターブランドです。ヴィンテージアンプや名機のサウンドを現代的に再解釈し、独自の機能や幅広い音作りの可能性を加えたペダルを開発しています。サウンドだけでなく、個性的で遊び心のある筐体デザインも人気です。
「Venus」は、エリック・ジョンソンやデヴィッド・ギルモアらの使用で知られる名機「BK Butler Tube Driver」にインスパイアされた、真空管搭載オーバードライブペダルです。特徴は、歴代Tube Driverのペダル版やラックマウント版のサウンド、機能を取り入れつつ、現代的な改良を加えていることです。ECC83とECC82の特性を組み合わせたECC832真空管を搭載し、Biasコントロールや3バンドEQ、Fat/Tight切替などによって、滑らかなオーバードライブからファズに近い荒々しいディストーションまで、幅広い音作りに対応しています。また、従来のTube Driver(特に4ノブモデル)とは異なり、一般的なDC9V電源で駆動できます。
Crazy Tube Circuits「Venus」の操作系
一般的な、ゲインとボリューム、hi、mid、loの3バンドEQは分かるとして、Venus特有の操作系を紹介します。
- Bias(バイアス):ノブ
真空管のカソード電流を調整し、歪みの質感を変化させる。右に回し切った状態では、最もクリーンなサウンドで、左に回すと荒々しくゲート感のある歪みに変化する。 - Tight(タイト):スイッチ
真空管の増幅段に入力する低域・中低域の量を切り替えるスイッチ。通常時は低域が豊かなFatモード、スイッチを押し込むと低域を抑えたTightモードになる。ラックマウント版Tube DriverのContourコントロールに着想を得ている。 - Line Driver(ラインドライバー):スイッチ
出力方式を切り替えるスイッチ。通常時はバッファーを介さない楽器レベルの出力となり、押し込むと低出力インピーダンスのバッファーを介したラインレベルの出力に切り替わる。後段への信号伝送能力が高まり、出力レベルも増加する。なお、通常時とラインドライバー使用時では出力信号の位相が反転する。
Crazy Tube Circuits「Venus」のレビュー
基本は「粘りがある歌うリード系」サウンド
ゲインもEQも12時に設定して試すと、ローミッドが厚く、サスティーンがあって、粘りがあります。Tube Driverの使用で知られるのが、エリック・ジョンソンやデヴィッド・ギルモア、私にとってはアンディ・ティモンズなのですが、それらから想像される「存在感のある歌うリードサウンド」を出しやすいです。ゲインを上げてゆくと、伸びや粘りが増してゆき、かなりの飽和感が出ます。
ゲイン量としてはディストーションと呼ばれるレベルですが、歪みのクリーミーさや質感からオーバードライブの延長線上にあるような印象があります。(歪みの質でODやDistと分類しているわけではないのですが…)
意外と癖のあるEQ
VenusのEQはTube Driverを踏襲したものです。微調整はされているかもしれませんが、特徴は引き継いでいると理解しています。そんなEQで「おや?」と思ったのが、Midがローミッド寄りを中心に変化させることです。そして、Hiは結構高音のシャリシャリシャーシャーする音域を変化させます。Loはイメージ通りの変化から、ちょっとだけ高めの音域が変化するかなぁといった印象。なお、すべてのEQを絞り切ると音が出ません。
すべてのEQを12時位置にすると、先に書いたような歌うリードサウンドになり、そこにHiのキレやエッジ感が載る感じです。Midが低め、Hiが比較的高い音域に効くので、MidとHiが離れている、MidとLoが近いような印象を受けます。そのため、カリッと、カラッとした音作りがしづらいです。
TightとLine Driverで音作りの幅が広がる
Tightで低音域を絞るので、飽和感を抑えることが出来ます。もともとローミッドが厚いので、ローミッドが厚いPUと組み合わせるときに厚くなりすぎるのを抑えることが出来ますし、Tightを押した方がフラット寄りになります。
Line Driverを入れると出力がローインピーダンスになり、アウト側のケーブルの影響を受けづらくなります。簡単に言うと、ハイミッドからハイにかけてが、すこし明瞭になります。短いケーブルを使っていてもそれなりに差を感じたので、ちょっとした味付けが入っているかもしれません。
すると、Tightでローミッドを整理し、Line Driverでハイミッドあたりを際立たせるのでフラットなバランスに近づきます。フラットになるというわけではないですが、これで微調整が可能ですね。
ローミッドが押し出されて抜けてくるサウンド
ゲイン0では音が出ず、できるだけローゲイン設定にして、Custombucker Alnico3でも、それなりにしっかりと歪みます。TSのゲインを12時ぐらいまで上げたぐらいは歪みます。ローゲインでVenusの基本の味みたいなものを探りますと、ローミッドが持ち上がって、ギターの基音が押し出されるのか、厚みや押し出しが増える感じがあります。家で試すような音量では、真空管由来の艶感というか、それっぽさはあまりありません。(真空管アンプの良さって、ハイの反応の良さだと思うので…)
スタジオで試した際には、ローミッドの押し出しによってプレイが聴き取りやすく、力強さを感じます。私のギターはSSHスタイルのストラトで、VOX MV50にセレッションのG10 Goldを組み合わせたセットにVenusを繋いだ状態として、友人がスタジオのレクチを使うというシチュエーションでは、私のVenusを使ったセットの方が押し出しが有り、聴き取りやすくて良かったです。ちなみに、Midを全開で、Hiを絞ってもサウンド設定としては成立する(さすがにこもり気味ですが)印象を受けました。一方、Hiを上げるとシャリシャリが目立ちすぎます。
スタジオレベルの音量では試せていませんが、ハイミッドからハイが強く、ローミッドが相対的に落ち着いたシングルコイル(特にブリッジ)と組み合わせると、厚みのあるサウンドがマッチして、リアハムを組み合わせた時のスムースな感じとはちょっと印象が変わります。
個人的な印象としては、細いシングルコイルを太く、パワフルにしつつ、ハムバッカーとの組み合わせで破綻しない程度に抑えているように思います。
最後に、電源はDC9Vで良いですけど、必要電流量が500mAとかなり重く、ペダルボードの電源系に頭を悩ませる1台となっています。
Venusに何を期待するかで評価が変わりそう
もし、Tube Driverのサウンドが欲しいなら、Venusは一般的なDC9Vで動く、コンパクトな代替機として活躍してくれそうです。ちなみに、まだ記事にしていませんがTube Driverの3ノブ機も手に入れ、比較するのですが、方向性はかなり近いです。(3ノブ機自体がTube Driberの中でも独特とされている) ゲインも十分に高く、飽和感のあるドライブサウンドを狙うなら、かなり有力な1台だと思います。
一方、真空管アンプ的な味や、反応の良さを加えるプリアンプとして捉えると、ちょっと違います。ローゲイン設定でも歪みますし、ボリュームへの反応もそこまで良くないです。
というわけで、Tube Driverリスペクト機というペダルとしての完成度は高いです。そこを高く評価するかどうかで、Venusが欲しくなるかが決まると思います。
