私が敬愛するアンディ―・ティモンズのシグネチャーモデルであるIbanez AT100CLを購入しまして、そのリアハムに搭載されているDiMarzio AT-1(DP224)をレビューします。
基本はゲイン高めに設定することで、アンディ―本人のような、伸びやかで、粘りがあり、歌うようなリードサウンドが出しやすいです。JHS AT+があれば完璧。クランチもニュアンスが出て、刻みサウンドも悪くない、汎用性の高いハムバッカーです。

DiMarzio AT-1の歴史と、JBとの関係が深い開発背景
DiMarzio AT-1(DP224)は、アンディー・ティモンズのために開発されたシグネチャー・ハムバッカーです。DiMarzioによれば、AT-1は2001年から使用されており、当初はIbanezのシグネチャーモデル専用のカスタムPUだったそうな。現在では単体販売され、評価も高いです。
AT-1の開発には、アンディーが長年愛用していたSeymour Duncan JB(SH-4)が大きく関わっています。アンディーはインタビューで「JBを出発点として、DiMarzioのピックアップ設計者であるスティーブ・ブルーチャーとともに開発を進めた」と語っています。
DiMarzioはAT-1の特徴として、バランスの良さ、温かみ、明瞭さを挙げています。PAF 36th Anniversaryと共通の特許技術を採用しながら、より高い出力とロック向けのサウンドを狙ったモデルとのこと。
補足情報として、DiMarzioは、Music ManのEVHモデルに採用されたブリッジ用ピックアップに近いサウンドを持つ市販モデルとして、Tone ZoneとAT-1を挙げています。
すこし情報を整理すると…。
DiMarzioはMusic Manのエディ・ヴァン・ヘイレン・シグネチャー・モデルに向けてピックアップを開発。この際、最後まで採用候補に残りながら選ばれなかったブリッジ用ピックアップが、Tone Zoneとなっています。そして、一般発売されていないEVHモデル用PUに近いものとして、候補に残ったTone Zoneと、別系統ながら近いサウンドのモデルとしてAT-1を紹介している、という流れになっています。
さらに補足すると、EVHは「元々使っていた、ちょっと故障したけど独特のサウンドが出るJBに近いサウンドが出るDiMarzioの候補PUを選んだ(実際に選んだのはスティーブ・ルカサー)」と語っているので、AT-1がJBをベースとしている点と共通点があって面白いですね。
DiMarzio AT-1のスペック
- 推奨ポジション:ブリッジ
- マグネット:アルニコ5
- 直流抵抗:16.50kΩ
- 出力:320mV
- 配線:4芯
- 推奨ポット抵抗値:500kΩ
トーンチャート(DiMarzio米国公式)
- Bass:9.0
- Low Mid:8.0
- High Mid:8.0
- Treble:3.5
特徴的なトーンバランスを持つAT-1
AT-1で興味深いのは、独特なトーンバランスです。
低域からハイミッドにかけて高い数値である一方で、トレブルは3.5に抑えられています。高域を強調して音の輪郭や抜けを生み出すタイプとは異なり、低域から中域の豊かさを重視したキャラクターと言えるでしょう。
開発の出発点となったダンカンのJBは、ハイパワーでローやミッドもありながら、高音域が強く、エッジの効いたサウンドとされています。このことと比較するとAT-1のキャラクターが分かりやすいかもしれませんね。
なぜこうなったか?というと、アンディー本人によると「歌うようなリードサウンドを得るためには一定のゲインが必要になる一方、歪みを深くすると高域が耳障りになりやすいため」といった趣旨のコメントを出しています。
DiMarzioハムバッカー AT-1(DP224)のレビュー
AT-1の得意分野「歌うリードサウンド」
アンディー・ティモンズの代名詞とも言える「歌うようなリードサウンド」にAT-1は欠かせません。私はIbanez AT100CLを所有しているため、そもそもアンディ―サウンドを出しやすいというアドバンテージが有ります。そのことを考慮しても、AT-1は「スムースで伸びがあるリードサウンド」を出しやすいです。JHSのAT+を組み合わせれば、もうあの感じ。
まず、絶対的なパワーが有ります。標準的なセットアップではかなりのパワー感があり、ドライブペダルやアンプのローやローミッドをプッシュして、厚みのあるドライブサウンドを作りやすいです。コンプレッション感もあり、喰い付くとか、粘りがあって弾きやすさがあります。これが、伸びやかな「歌うリードサウンド」の秘訣なのでしょう。
ローが強いハイパワー系と異なるのは、この状態でもハイミッドがしっかりと出ていて、カリッと、エッジ感が出てくれることです。一方、ギャリギャリと不快なプレゼンスは抑えめで、ドライブペダルやアンプの設定に神経質になる必要性が薄いです。ゲイン高めだと、そもそも機材側でコンプレッションがかかっていることも考慮しつつ、AT-1自体もコンプレッションが効いているように思います。
面白いのは、ピックアップ高さを近づけてもギャリギャリしづらいし、遠ざけてもパワー感が残るところです。もちろん、音のバランスというか特性は変わってゆきますが、急激に魅力が無くなるみたいなことは無さそう。アンディ―本人も、結構遠目に設定しているっぽい。
クランチサウンドでもニュアンスが出しやすい
そのままクランチ状態のドライブペダルやアンプに入れると、ちょっとローからローミッドが強いので、アンディーはKeeley MK3 DriverやXotic RC Booster Classicを通して軽やかにしているようです。
ハイパワーPUを、前段で低音をカットするような使い方にすると、すっきりするけど旨味も減る感じがしたりしますが、AT-1ではミッドの厚みが残って良いです。ハイゲインではコンプレッションが効いている印象で、そこは大きくは印象は変わらないのですが、比較的、ニュアンスも出るように思います。
刻むバッキングはそれなり
ドンシャリなVシェイプサウンドを出すためにローとハイを持ち上げてミッドを削って弾いてみると、悪くはないです。ただし、ローミッドの厚さと、低いローが抑えられているためか、「ドン」とか「ズン」という重い、締まったサウンドではなく「ボン」と膨らみます。ハイミッドがあるため、モコモコ感は控えめですが、ギャリっとした鋭さも控えめです。
パワーもあるので刻むバッキングができないことはないですが、最適ではない感じ。このあたりは、ボーカルの裏でバッキングをすることが少ないアンディ―ティモンズが、そこよりもリードサウンドを重視したと考えるとうなずけるバランスだと思います。
タップサウンドも良いらしいが未チェック
アンディ―・ティモンズ本人は、ネック・センタートーンとブリッジトーンの間にタップスイッチを仕込んで、AT-1単体でタップできるようにしています。2026年時点のシグネチャーモデルAT100CLではタップスイッチは無く、ハーフトーン時にオートタップできるようになっています。
そのため、私はAT-1単体のタップを体験していません。本人の機材紹介動画では、出力もしっかりとあり、かなりカリッとしたシングルっぽいサウンドが出ていました。そのうち改造したいな。
AT-1は歌うリードサウンドを作り出すには最適なハムバッカー
リアハムを大雑把にジャンル分けすると
・シングルの延長線上のスッキリ系
・全域バランスの良いモダン系
・ミッドが厚いリードサウンド系
・ローが厚い古典的なハードロック・メタル系
あたりに分けられるのではないでしょうか?
この中で、リードサウンド系の選択肢はちょっと少な目だと思います。この観点で考えれば、リードサウンドを得意とするギタリストが、リードサウンドのために調整したピックアップということで完成度が高いです。
クランチも上手く、刻みサウンドもこなしてくれるので、汎用性が高いと思います。




