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Strymon FAIRFAXは特性を理解すれば魅力が増すペダル[レビュー]

1度聞いただけではコンセプトが分かりづらいStrymon FAIRFAXのレビューです。FAIRFAXはFender Champ系サウンドを模擬するドライブユニットから着想を得ています。言い換えると、FAIRFAXは、12AX7と6V6、トランスによって生まれる小サイズのアンプ特有の歪みを大出力のアンプで実現するコンセプトを受け継いでいます。

これだけだといまいち良さが分かりにくいですが、クリーンなトランジスタアンプ(JC-120)や、デジタルのモデリング系の前段にFAIRFAXを追加し、真空管アンプのような自然で複雑な歪み感をプラスし、ギターボリュームの操作への追従性を良くしてくれます。

ここから私は、レジェンダリーなアンプのプリアンプ部を模擬したペダルの後段にFAIRFAXを配置して、FAIRFAXをアンプのパワー段に近い役割をさせることが出来るのではないか?と考えました。この発想は個人的に大正解で、FAIRFAXの特性を理解することで魅力が増すペダルだと感じています。

Strymon FAIRFAX レビュー

Strymon FAIRFAXって何?

 公式の説明を引用すると、FAIRFAXは、1965年にランディ・バックマンのために設計されたオリジナルのGarnet Amplifiers Herzog真空管ドライブユニットからインスピレーションを受けています。Herzogを真空管アンプと説明する人もいれば、ドライブユニット(=エフェクター)と説明する人もいて、結構混在しています。

 その理由は、Herzogがかなり特殊な立ち位置にある製品だからです。Herzogは、ほぼFender Champと言える、12AX7のプリ段と6V6の出力段、トランスを持っており、ここにダミーロードを備えた製品です。そして、その出力を、より大きなアンプの入力に接続して、Champのような小サイズアンプが歪んだ感じを大きなアンプから出すことを想定したものです。つまり、ほぼアンプ=Champだし、ドライブサウンドを作るための装置(ペダル)だとも言え、そのために説明が混在してしまっています。

 HerzogをベースにしているStrymon FAIRFAXは設計としては完全にペダルですので、FAIRFAXは小サイズアンプの歪み感を狙ったペダルと言えます。

Strymon FAIRFAXの設計について詳しく解説

 Herzogは、真空管アンプと同様の真空管や電源回路、トランスを持っています。一方、FAIRFAXはトランジスタだけで再現することを試みています。小サイズの真空管アンプらしい歪みを再現するため、ドライブ(ゲイン)とボリューム以外に、SAGという独自の(というほど特殊ではないですが)コントロールを備えています。

 サウンドの基本を調整するのが、ゲインを調整するドライブ、ハイだけでなくエッジ感の調整をするブライトスイッチ、音量を調整するレベル、そしてSAGで構成されています。分かりにくいのはSAGぐらいですよね?ということで、SAGの説明をします。

Strymon FAIRFAXのSAGの説明

 SAG(サグ)とは、アンプでゲインや音量を上げていった際に、電源の容量(パワー)が足りなくなり、頭打ちになって、音が潰れる現象を指します。分かりやすい例で述べると、正常時には主に低音域が「ズーン」と鳴るところ、サグが発生すると「グシューン」と頭が潰れるような感じになります。実際にはサウンド全体に影響していると思いますが…。

 音響機器としてはサグは悪い現象ですが、ギターアンプではコンプレッションになって弾きやすくなったり、独特の歪み感が魅力とされています。

FAIRFAXを単体の歪みとして考える

 HerzogがChampの歪みを再現することが目的だったことを考えて、単体の歪みペダルとして扱ってみましょう。ドライブを低め、SAGを絞り切り、ブライトをオフで弾いてみると、低い低音が少し抑えられ、ハイも抑えられてミッドに寄った素朴なサウンドになります。

 ドライブを上げていって歪み始めると、エッジの立ってバリバリとした、小サイズアンプっぽい歪みが出てきます。Tweed Champだとローミッドが厚いままで「ブオー」っとブーミーなサウンドをイメージしますが、低音を抑えているからか、ハイミッドに寄った歪み感です。悪くないのですが、素朴であるが故に「普通のペダルみたいな使いやすさ」はなく、オールドスクールなサウンドを扱いきるセンスみたいなものは要求されます。ギターボリュームへの追従は良好で、操作によってスッと落ち着いてくれます。なお、ゲインもそこまで上がらず、Champで演奏されたと有名な「Layla」を弾くのには足りないゲイン感です。

 歪みの質感やコントロールも独特で、かなりの鋭さが立ってきます。ペダルにトーンコントロールが無いため鋭さを抑える術がほとんど無く、ブライトをオンにして歪みを強く出すと、刺さるような鋭さが出ます。さらに、ドライブをMAXまで上げると音量が大きくなり、レベルを絞り切っても、原音よりも音量が大きくなります。調整幅が狭い。

 SAGを上げてゆくと、電源がしょぼくなって音が潰れてゆくからか、音量が下がります。歪みのエッジの鋭い部分が出にくくなるのか、すこしだけ音が丸くというか曇ったような印象になります。また、低音は「グシューン」と頭が潰れるような感じになりつつ、SAGをさらに上げてゆくと、ボソボソブツブツと音が潰れ、SAG MAXで調子の悪いファズのような、音がまともに出ない状態になります。

 アンプのインプットをプッシュするオーバードライブとして使うのも良いですが、ここでは単体歪みとして話をまとめます。ゲインを上げた際に鋭さが立ち、扱いづらさが出てくるため、クリーンアンプに僅かな歪み感をプラスするぐらいが、ちょうど良い塩梅であると感じました。

FAIRFAXをプリアンプとして考える

 FAIRFAXをプリアンプとして考えて、TS系でFAIRFAXをプッシュしますと、ローゲインなTS系のシンプルな歪み感に、FAIRFAXのアンプっぽい有機的な歪みが絡み合って、厚みのあるドライブサウンドが得られます。これはFAIRFAXのドライブを上げても、TSのゲインを上げても得られないもので、スタッキング特有の魅力です。個人的に、バッキング程度の軽い歪みをTSで作っておいて、ボリュームとドライブを大きめにしてにしたFAIRFAXを後段に置いてバッキング時はOFF、ソロ時にONするのが好みでした。FAIRFAXを常時ONでソロ時にTSをONでも良いです。(TS単体の音が結構好きなので、前者を推奨しました。)

 オーバードライブの受けが良いということで、ファズ受けの性能も確認しました。

 ファズの回路は色々なので一概に言うことは難しいですが、手持ちのFUZZ FACE系と、Big Muff π系との相性は良好で、単体だとパリパリザラザラした質感であったのを上手くまとめ、厚みを出してくれます。ファズ受けを期待してFAIRFAXの導入を考えても良いレベル。

デジタルモデラ―(マルチエフェクター)の入力段として

 プリアンプとしての活用の応用編としては、Strymon Iridiumのようなモデラ―や、Valeton GPシリーズのようなマルチエフェクターの前段にFAIRFAXを置いて、アンプモデルのゲインを少し下げて設定して、FAIRFAXを少し歪むような設定にする。そうしたら、歪みが複合的になって厚みが出るということが期待できます。また、ギターボリュームを絞った際の追従性が良くなり、スッと歪みが落ち着きます。

パワーアンプ部のシミュレーション装置として考える

 FAIRFAXは前段の歪みの受けが良いです。そして、多少の味付けはあるものの基本はあっさりです。言い換えると、マーシャル系の味とかはありません。

 というわけで、特定のアンプのプリアンプ部を模したようなペダルの後段にFAIRFAXを置いて、FAIRFAXをパワーアンプっぽく扱おうというのが私の魂胆です。これで何を組み合わせたかというと、LPD Pedalsの「JMP 79」です。

 JMP 79は、1979年のマーシャルJMPアンプを再現しているペダルです。単体の詳細レビューは↑を見ていただくとして…。JMP 79単体では、ゲイン最大でも想像していたよりも(自分が求めているよりも)ゲインが低めで、歪み方もスッキリとしていました。おそらく、実際のアンプのインプットに入れた時に、アンプ側が歪んで厚みが出ることを想定しているのだと思います。(JMP 79の説明では、不思議なほど「PAとかインターフェイスに入力できるよ」とは書いていないのです)

 この状態で、JMP 79の後段に、わずかに歪む状態にしたFAIRFAXを置くとシステム全体でゲインが上がり、歪みに複雑さというかワイルドさが出て、厚みが出ます。JMP 79の前段にオーバードライブを配置してもゲインが上がったのですが、アンプ単体で歪ませているのとは違う、プッシュした時のサウンド(それはそれでよい)だったので、FAIRFAXと組み合わせて、アンプ単体で歪ませたようなサウンドが出て大変満足です。ちなみに、ギターボリュームへの反応も最高です。

 自分は、ギター→JMP 79→FAIRFAX→Valeton GP-5としています。

 GP-5は、クリーンのアンプモデル(自分はJC-120であっさりした設定)+York Audioのマーシャル系IR+EQ+ディレイ(任意)+リバーブという設定になっています。

 最後に記載しておくと、FAIRFAXの元となったHerzogは、Champ系の回路ということで、6V6のシングルエンドを再現していることに注意です。言い換えると、マーシャル系のプッシュプルを再現したものではなく、低音域の厚みを再現するのは苦手です。よって、マーシャルを大音量で鳴らした時のような迫力ある低音域は出づらいです。そのため、私はJMP 79のBASSやGP-5側のEQで補正しています。

Strymon FAIRFAXを活用するなら、特性を理解するのが第一歩

 もし、FAIRFAXを単体歪みとして捉えると、小型アンプっぽいバサバサバリバリした歪みで魅力はありますが、ゲイン低めで、トーンコントロールも無く、守備範囲が狭い印象です。それだけのために3万4000円程度(2026年8月現在)は高いです。

 なので、FAIRFAXがスタッキングした際の反応が良いという特性を理解すること+他の機材との役割分担を考えることで、プリアンプや、デジタル機材の入力段として、プリアンプ模擬ペダルのパワーアンプ部模擬としてなど、様々な働きを指せることが出来ます。

 JMP 79のレビューの方で記載していますが、私がお世話になっているショップの76年製JMPアンプを弾いた時の『夢が見れる』(同じとは言っていない)というサウンドを実現するために、FAIRFAXは必須のパーツでした。それだけのためとしては高かったですが、代替が効かず、満足のいくサウンドが出ているので、結果的にFAIRFAXを買ったことに対して大満足です。

 真似してくださいとは言いません。レビューを参考にして、柔軟に使っていただければと思います。

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