私のIbanez J.Custom RG8570のブリッジ側にはDiMarzioのTone Zoneが搭載されています。Ibanezが古くから純正採用してきているので、どんなサウンドか気になる人も多いのでは?と考えてレビューしました。

DiMarzio Tone Zoneの歴史
DiMarzioの「Tone Zone(DP155)」は、1991年に発売されたハイパワータイプのハムバッカーピックアップです。その誕生には、エディ・ヴァン・ヘイレンが深く関わっていることは有名です。DiMarzioは、ミュージックマン製のEVHシグネチャーモデルの開発にあたり、複数のピックアップを試作。最終的には2種類のブリッジ用ピックアップが候補として残り、エディ自身も甲乙を付けられないという事態が発生しました。そこで、試奏に参加していたスティーヴ・ルカサーの意見が決め手となり、一方のピックアップが採用されることになりました。
このとき採用されなかったピックアップが、実はTone Zoneとなりました。
なお、DiMarzioは、EVHシグネチャーモデルに採用されたブリッジピックアップに近い音色を持つ製品として、Tone ZoneとAT-1を挙げています。
Tone Zoneのスペックと特徴
Tone Zoneは、アルニコ5マグネットを採用し、直流抵抗値17.31kΩ、出力375mVという、ハイパワータイプに分類されるピックアップです。レビューするのは、RG8570に搭載されるF-SPACEモデルです。
- モデル:Tone Zone(DP155F)
- マグネット:アルニコ5
- 直流抵抗:17.31kΩ
- 出力:375mV
- Bass:9.5
- Low Mid:8.5
- High Mid:8.0
- Treble:4.0
Tone Zoneは、DiMarzioの特許技術であるデュアルレゾナンス構造を採用し、太いサウンドと豊かな倍音を両立させている点が特徴です。また、Dimarzioは広いダイナミックレンジも特徴として挙げ、強くピッキングすればパワフルな音が得られ、弱くピッキングすればクリーンで小さな音を出すことができると説明しています。
Tone Zoneのレビュー
Tone Zoneの基本レビュー
大雑把にネットのレビューをまとめると「Tone Zoneは、太い低音と中低音によって、バッキングで音の隙間を埋める『壁』のようなサウンドを作りやすいピックアップとして評価されることが多い。パワーコードやハイゲインのリフでは厚みと迫力が出やすく、リードでは丸く滑らかな音になりやすい。一方で、その低音の多さからブーミー、あるいはマディに感じるという意見もあり、ギターやアンプ、ピックアップ高によって評価が分かれやすい。」といった感じ。
私のRG8570は、メイプルトップ+マホボディー+ロッキングトレモロ+ロックナットという組み合わせです。一般に、マホガニーは中域から中低域に厚みのあるサウンド、メイプルは明瞭なアタックと輪郭を持つサウンドになるとされます。マホガニーバックにメイプルトップを組み合わせた構成では、マホガニーの太さにメイプルの明瞭さや締まりを加える、と説明されることが多いです。さらにここにロッキングトレモロとロックナットが組み合わさると、ハイというかプレゼンスが強めに出ます。
このことを踏まえつつTone Zoneをレビューしてみると、ハイゲインで壁のような、例えばDream TheaterのPull Me Underの有名なリフのようなサウンド(当時、ジョン・ペトルーシはTone Zoneを使っていたとされています)が簡単に作れます。アンプ側でVシェイプなドンシャリサウンドも作っているでしょうが、かなり低いところまで響く低音はToneZone由来のように思います。
もう少し詳細にTone Zoneをレビュー
リードが得意とするレビューも多い中で「本職ではないような気がする」というのが私の感想。というのも、伸びや粘りに繋がるミッドが低音域よりも控えめで、ひと伸びが足りなくて音が細く(実際には低音域があるので細いわけではなくて、弾き心地として細いって言って分かるかな…)感じやすい。コンプでプッシュするような使い方をすると粘りが出て弾きやすくなります。
RG8570は低音域が締まりやすい構造であるためか、低音の塊感があり「ドゴーン」という低音域。アッシュ+フィックスドブリッジ+Tone Zoneのモデルも弾いたことがあるのですが、そちらの方が印象が良く、塊感と締りがあって「ドスンバシン!」とキレが有ります。
また、ロッキングトレモロ特有の弦の金属感(ピッキングのギャリっとかキーンという音。プレゼンスに近い。)が乗り、これによって切れ味がサウンド全体に切れ味が出ているように感じます。低音と合わせてレビューすると、ドンシャリというよりも、さらに低い音と高い音が強い「ドゴンギャリ」感があります。これはRG8570のPU近めの標準セットアップではより強く出ます。ですので、やや低くセットするとドゴンギャリが収まるものの、ミッドの粘りが弱くなりがちです。
そのため、アッシュ+フィックスドブリッジのような引き締めたサウンドとか、J.Customの「低音は壁で、プレゼンスが効いている。」サウンドといった、バランスを見極めた採用が必要なPUだと私は感じています。このあたりが、評価が割れる一因にもなっているのではないでしょうか?
おそらくですが、フローティングされたシンクロナイズドトレモロにプレスタイプ(フェンダー系)のサドル、弱めのスプリング、ピックガードマウント、安価モデル特有の柔らかい木材と甘いネックジョイント、剛性の低いペグなどが合わさると、音像がぼやけ過ぎて、低評価につながるのではないか?と思います。
方向性が定まった、言わば「腕の良いショップのチューンドカー」のようなギターに載ったTone Zoneは、歪んだアンプにTS-9やコンプ一発で、ハードロックやメタルに最適なサウンドが簡単に出ますので心強く、ロングセラーになっているのだと思います。私の自宅のMesa/Boogie Mark Five:25でハイゲインにして、VシェイプのEQとするだけで、マジで壁のような完璧なサウンドになります。笑っちゃいます。
ちなみに、ピッキングハーモニクスが出やすく、ハーモニクスも「フォォォォ」と深く、複雑な倍音が乗った感じです。このレビューの後にTone ZoneからNortonに交換するのですが、Nortonではちょいハーモニクスが出にくく、「コーーー」という割と普通のハーモニクスで、かなり違いを感じます。
DiMarzio Tone Zoneのレビューまとめ
壁のような轟音の歪みサウンドを作りやすく、少しの工夫でリードサウンドも対応できます。ただ、かなり極端なピックアップですので、ギターとの相性を見極めたうえで採用しないとバランスを崩す可能性が高いです。
現代的な「全体域がバランスよく出ていて、機材側で調整」というモダンなPUとは対極的なモデルであり、出てくる音もちょっと古臭いことは否めませんが、確実に「Tone Zoneの音」というものは存在すると感じました。90年代以降のハードロックやメタルを理解する上で、一度経験する価値はあると感じます。
現在私は、歌うリードサウンドをテーマとして練習しており、もうちょっとミドルが粘るPUの方が扱いやすく、交換を検討中です。
